第42話 小説賞に応募してみようかな……<7>
今回は表彰式の思い出ではないのだけれど、血の気が引くという経験繋がりと詩と同じく短文形式の文学ということで、俳句のことについてです。
詩と小説を書いていて、ある日、「一番短い文学である俳句ってどんなもの?」という疑問が浮かびました。疑問が浮かぶと自分なりの答えが知りたいという好奇心がどうしても抑えられず、一年間、俳句講座に通いました。
それがなんと、いま超人気のあの先生の講座だったのですよ。
まだテレビには出演しておられず、でも新聞や雑誌でそのお人柄やご活躍は知っておりました。
それにしても、私の「知りたい、やってみたい」という欲求には、抑えきれない強いものがあります。
恥も掻き、とんでもない目にもあってきました。
現在70歳を過ぎて、3人の孫の祖母として平凡に生きていられる不思議に、時々、感謝することがあるくらいです。
でもこれはやはり、夫の忍耐強さの賜物なんでしょう……。(笑)
……で、話を元に戻しまして、一年学んだ結果の、俳句とはなんぞやという私なりの答えはというと……。
表現文字数の少ない俳句って、作者が表に出て自分の作品について賢く口達者に押し強く説明しなければならないもののようだということです。
そのうえに、先生による添削に疑問を感じることなく、ありがたくお受けしなければならないとは。
それは自分が模索している表現方法ではありませんでした。
ということもあって、俳句の講座は一年で止めたのですが。
その後、一年間の講座の様子を、先生は1冊の本にされました。
懐かしく思い、書店でぱらぱらと立ち読みしたのですが、20人ほどの生徒数の中に、私の名前はありませんでした。
まあ、いつも教室の隅でおとなしくそれでも先生の言葉に首を傾げていた根暗の私の存在など、本を汚すだけなのだとはわかってはいるのですが。
でも、先生が今月のお題の最優秀作品に選んだ私の俳句までなかったことにされたのには、書店で、あまりの恥ずかしさと怒りで血の気が引きました。(笑)
あのときの講座で、伏せていた私の名前が明らかになったとき、先生はテレビで拝聴しているままの口調でおっしゃられました。
「へぇ~~、あなたの句なんだ」
う~~ん、作品に罪はないだろうに。
でも、それが俳句の世界なんだと、いまその先生のご活躍をテレビで拝見していて思います。
私は、匿名の後ろに隠れて、コメント欄を閉じれば交流すらしなくてよい、一人でこっそりと楽しめるカクヨムが大好きです。
「自分が面白いと思い、楽しいと思えばそれが一番。それを顔をだしてまで、他人さまと喧嘩してまで、作品の背景について自分の思惑について、いちいち説明をしなければならないなんて、面倒くさい」
70歳を過ぎて、あちこちにぶつかってきた結果、やっとたどりついた結論です。
だから、小説賞に応募なんて、ぜんぜん考えてもいなかったのですが。
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