第40話 小説賞に応募してみようかな……<5>
前回に書いたように、長男を出産したベッドの上で、「よっしゃー! あたしは小説家になる!」と決心して……。
でも、それまで、私は本を読むのは好きであったけれど、小説はというよりエッセイすら書いたことがありません。
そのうえに、これから子育てという女性にとって一番忙しい年代に突入してしまったというのに。
それで「短い詩なら、家事と育児の隙間時間でなんとかなる」と思い、タウン情報誌に「仲間を求む」と書いてあった詩のサークルの主催者に、独身だと偽って電話しました。
長男を出産したのが秋、詩のサークルの主催者と書店で待ち合わせたのが、その年の年末です。
まだ出産後の体形が戻っていなくて、私は子豚のように太っていました。
そして、年末の街の明るいイルミネーションと気ぜわしさを、いまだに覚えています。
主催者の男性はジーパンを穿いて若い格好していたけれど、30歳に近かったような。
その日からニセ独身者となった私は、若い仲間たちとガリ版刷りしたり交換ノートしたり仲間の家で料理して食べたりと、第二の青春を楽しみました。
ほんと、ネットもスマホもない時代の話です。
そのうちに、こういうことも書き残しておきたいなあ。
でも、今回のエッセイのテーマは小説賞応募についてなので、そのことについてのいくつかの思い出話を書きます。
上に書いた書店での待ち合わせから始まり、50歳前で一度すっぱりと筆を折るまでの25年の間、紆余曲折を経ながらも書き続けました。
そしてその間に、いろいろな賞に応募していくつかの賞をいただき、こんな私でも表彰式というものにも何度か出席したことがあるのですよ。
しかしながら、洋服を新調してまで出席した晴れがましいいくつかの表彰式であったのに、よい思い出というのがなく。
いまだに思い出すと、「うわ~~!」って、叫びたいことばかり。
これが、私の恨みがましい性格からきているのか、私の作品の傾向からきているのか、いまだに謎ではあるのですが。
あっ、もしかしたら、いまふと思ったのですが……。
自分の想いが詰まっている<書いたもの>が賞をもらう(他人様に認められる)って、そんなにハッピーなことではないのかも知れません。
表彰式において、「なんでこんな展開になるの?」と思う嫌なことって、よくあることなのかも。
私だけに起きた特別な恥ずかしいことだと、人に話すこともなくもずっと心に秘めてきたけれど、もしかしたら小説賞授賞式あるあるだったりして。
ああ、きっとそうなんでしょう。
いや、絶対に、そうに違いありません。
小説という自己顕示欲と承認欲求ががちがちに詰まったものを、これまた自己顕示欲と承認欲求の塊である複数の審査員が選評するのですよ。
和気藹々の「おめでとうございます」だけで終わる訳がないじゃありませんか。
ああ、コメント欄を開いて、「実を言うと、私もそうだった」っていう話で盛り上がりたいですね。(笑)
……ということで、次回から、いまだに思い出すと「うわ~~!」と叫びたくなるいくつかの思い出を書きたいとおもいます。
ほんとにもう棺桶に片足突っ込んでいるのだから、嫌な思い出は忘れるなり、<昇華>させるなりしたいのです。切実です。
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