第32話 ライトノベルって、なんなの?<6>


 今回は、私がハーレクインロマンス小説にハマった黒歴史について書きます。


 私とハーレークインとの出会いは、なんと、洗剤のおまけという形でした。

 スーパーで売っている某メーカーの洗剤にハーレクインが一冊おまけとしてくっついていたのです。


 同じ値段で本が一冊ただでもらえるとなれば、それは買わないわけにはいかないでしょう。


 

 白人の男女の顔が描かれたハーレクインの赤い表紙はいかにも煽情的で、洗剤のおまけであってもレジに持っていくのがちょっと恥ずかしかったのを憶えています。




 その日よりハーレクインロマンス小説にドハマりした私は2年間で350冊くらい読破しました。ノートに記録していたのでこの数字に間違いありません。(笑)


 しかしながらレジに持っていくのさえ恥ずかしいと思えた本を、どうして私は短時間で数百冊も読むことが出来たのか……。


 それは近所に古本屋さんがあり、読後の本は購入した金額の半額で引き取ってくれたからです。店主と顔見知りになるというハードルを越えれば、狭い店内で恥ずかしいものはありません。


 遅読な私ですが、ハーレークインはさくさくと1時間くらいで読めました。

 読めばすぐに売ったので積読状態にもならず。家族は私がロマンス小説に夢中とは気づいてもいなかったことでしょう。




 日本全国で私のように洗剤のおまけで読んでハマったという人が多かったのでしょうか。


 あれよあれよという間にハーレクインはシリーズも増え、1か月で10冊くらい新刊が出ていたような。


 グッズが欲しくて、ファンクラブに入りました。

 もう一つ恥を忍んで言えば、私は男性が牧場主で、女性は未亡人で子持ちという設定が好きでした。


 そうそう、どこの出版社かおぼえていませんが、日本版ハーレクイン小説というのも出てきました。しかしこれはまったく人気が出なかったようで、すぐに消えました。


 日本人女性は現実的な恋愛話より、外国を舞台にしたおとぎ話的な恋愛小説が好きなのかなと思います。ハーレクインが廃れたあとは、ヨンさまを代表とする韓国恋愛ドラマが日本の女性のハートを掴みましたから。




 思い出してもとんでもない2年間でしたが、ある日突然、ハーレクイン熱は冷めました。どうして冷めたのか、まったくおぼえていません。その日より今日までハーレクインは1冊も読んでいません。


 とんでもない2年間で、あの時間と情熱でもっと別のことに夢中になっていたらと後悔することもあります。


 しかし、ハーレクインを読みふけったことで、それまでまったく手に取ることのなかった欧米女流作家の翻訳小説が読めるようになりました。


 P・D・ジェイムズとかルース・レンデルとかパトリシア・コーンウェルとか。


 ああ、たぶん、そういう本を読み始めたので、ハーレクインを卒業できたのかも知れません。


 ……ということで、黒歴史の披露はここで終わりです。



 

 話は前回の<5>の続きに戻ります。


 書店で中華後宮恋愛ファンタジー小説を物色している60歳くらいの女性を見て、私は昔々ハーレクインを求めて日参していた古本屋の店主の言葉を思い出したのです。


「明千香さんのように、ハーレクインに夢中な女の人がもう一人いるよ。その人は60歳過ぎている」


 その時に、現役中高校生は読まないであろう中華後宮恋愛小説がカクヨムでは書くのも読むのも人気という不思議な現象に、私は答えを見つけたと思いました。


 


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