第31話 ライトノベルって、なんなの?<5>



 さらさらの長髪を風になびかせた若いイケメン皇帝とお目々ぱっちりの可愛らしい少女のカラー表紙絵で飾られた本を書店で手に取るって、恥ずかしくないですか?


 正直に言います。

 私は恥ずかしいです。


 そもそも、そういう本ばかりが並んでいる書店のコーナーに立つことそのものが恥ずかしいです。


 これって、古希を過ぎた自分の年齢からくるものかと思っていましたが、たとえ自分の年齢を半分にして30代半ばに戻ったとしても恥ずかしいと感じると思います。


 いやいや、たとえ自分がもっと若く、そういった表紙絵で購買者ターゲットとしている女子中学生や女子高校生であっても、恥ずかしさは同じだと思います。


 イケメン皇帝にお目々ぱっちり少女が仲良く並んでいる、そういう絵のある本を手に取っている姿をクラスメートに、ましてや男子やそして近所のおばさんには絶対に見られたくありません。(笑)


 まあ、恥ずかしいとか恥ずかしくないとかいう前に、そもそも書店で本を買う人がめっきり少なくなっていますが。


 小さな子どもを連れたお母さんが絵本のコーナーに、男の人だとホビー関係で、女の人だと料理本とファッション関係でしょうか。あっ、時々、お爺さんが時代劇小説のコーナーに立っているを見かけたりします。 




 ……と書きつつ、実を言うと、この5年間で私は一度だけキャラクター文庫本コーナーで、中華後宮恋愛ファンタジー小説を食い入るようにまじまじと見つめている人を見かけたことがあるのです。


「次は何を読もうかな?」って、その嬉しそうな女の人の顔には書いてありました。


 その人のお歳は私より十歳くらいお若い感じでしたので、たぶん、60歳くらいだったと思います。


 その人の姿を書棚の陰からちらりちらりと盗み見ていた私は、突然、昔々のことを思い出しました。


 私は30代の2年間近く、ハーレークインロマンス小説にハマったことがあったのです。


 30~40年くらい前に一世を風靡したハーレークインロマンス小説ですが、いまこのエッセイを読んでくださっている人でご存じの方がおられるかどうか。


 まだ刊行されているのだろうかと、先日書店で探しましたら、書棚の隅にありました。でも、私がハマったころの勢いはなかったですね。


 ハーレークインロマンス小説とは何?ということでネットで検索しましたら、『カナダのハーレクイン社(現在はハーパーコリンズの一部門)が出版している、女性向け大衆恋愛小説』とありました。


 日本語版のハーレクインロマンス小説は、1979年9月20日に発売されているとのことです。キャッチコピーは『あなたが探していた愛は、きっとここにある』『恋は、本屋さんに売っている』だそうです。


 そしてなんと、読者層は40代~50代女性が多いとか。


 私が夢中になった当時のハーレークイン小説の表紙のカラー絵は、逞しく頼り甲斐のありそうな男性の横顔とちょっとはかなげな風情の女性の顔を並べたものが多かったです。


 キャラクター文庫本のコーナーにある中華後宮恋愛ファンタジー小説の表紙絵の皇帝と少女を十歳くらい老けさせた感じではあるのですが、それぞれの絵のかもしだす雰囲気はよく似ていると思われませんか?


 



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