第24話 マイクラとスローライフという世界観<4>



 私は現実派で悲観論者だから、現実世界の田舎での移住生活もライトノベルの中でのスローライフも、暮らしにくく大変だろうとしか思えない。


 でも、なぜか、この年齢になっても憧れはある。



 現実世界だったら、海を見下ろす小高い山の一軒家で一人気ままにミシンを踏んでいたい。庭には季節の花々と野菜を少々植えて、ニワトリも飼って……。


 山の麓に住む村人とは、洋服のお仕立てやお直しの注文を受けるくらいの交流で、代金は物々交換で。


 ライトノベルの世界だったら、魔女になって深い森に住み薬草の研究をする。


 犬や猫を飼って、人との付き合いは、森の中で迷ったり行き倒れになった人を助けてあげるくらいかな。




 あらら、しばしキーボード入力する手を休めて、うっとりと想像してしまった……。(笑)



 それにしても現実的には、そんな暮らし方は絶対に無理って思うのに、なぜに、孤独なスローライフに憧れてしまうのだろう?


 それでふと思ったのだけど、ライトノベルではスローライフが大流行りだけれども、ハーレムや後宮ものも大流行りで…。


 かたや孤独なスローライフ、かたや人間関係が超面倒くさそうなハーレムに後宮。


 そうそう、パーティーを組んでのダンジョンもある。あれも、狭い空間で毎日顔を突き合わせて行動を共にするなんて、人間関係がもつれにもつれそうではないか。


(そうだった、私も、孤独なスローライフに憧れつつ、後宮も舞台となる中華ファンタジー小説を書いているぞ!


 喋れないうえに記憶も持たない、そもそも自分がどうしてここにいるのかもわからない美少女をヒロインに据えて、その周囲を癖のある多くの人が取り囲むという、自分で言うのもなんなのだけど、スローライフと後宮もののよいとこどりをした凝った設定だ)



 

……というようなことを考えつつ、コントローラーを握りしめて『マインクラフト』を楽しんでいたら、「あっ、マインクラフトって、究極のスローライフだ!」っていうことに気がついた。


 私は魔物が出ない設定にしているので、村を一歩出れば、まったくの独りぼっちの探索だ。


 時々、ものすごく風景の美しい場所に遭遇して、「ああ、感動を共有する仲間が、私のそばにはいない」と、寂しさを通り越して清々しさを感じる。



 そうだったのだ。


 ライトノベルのスローライフの元ネタって、古今東西の漂流ものの名作でもなくテレビ番組の『ぽつんと一軒家』でもなく、TVゲームにあったのだ! 


 気がつけばすごく当たり前のことなのだろうけれど。


 そしてそう思えば、読み方も変わってくるし、もし私がカクヨムでスローライフものを書くとしたら、その設定も『十五少年漂流記』や『ロビンソン・クルーソー』に求めたりはしない。



 それにしても、ライトノベルとTVゲームって、その世界観にはかなり共通したものがあるのだとは、いまさらながのことではあるけど、古希を過ぎた老婆には、衝撃的な気づきだったわあ~~。





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