第7話 『烏に単は似合わない』<4>



 阿部智里さんの八咫烏シリーズの第1巻『烏に単は似合わない』の再読が終わりました。


 1度目では気づかなかった伏線にたくさん気づきました。

「ああ、ここの2人の何気ない会話だけど、その実、怖くて深い意味があったのね!」と思うシーンをたくさん見つけました。


 そして、再読の中盤当たりで私はやっと理解したのです。


「この物語りで登場する人物たちは、皆、過去の出来事において心が傷ついていて、そのためにまるで息をするようにさらりと嘘をつく。でも本当の大嘘つきは作者だ!!」


 再読してやっとそのことに気づいた私です。(笑)




 しかしながら、私は年齢も年齢ですので、いろんな本を読んできています。作者さまの仕掛けたトリックの全部とは言いませんが、その雰囲気くらいは見破れるという自信があったのですが。


 この『烏に単は似合わない』では、そのセンサーがまったく機能しませんでした。


「なぜだろう?」と考えて、「ああ、そうか。登場人物たちの年齢のほとんどは、たぶん15歳前後。そしてお姫さまというものは、お屋敷の奥深くで大切に育てられた世間知らずに違いないとの思い込みが邪魔をしたのだ」と気づきました。


 華流時代劇ドラマの後宮もので、アラサーの美しい女優さんたちが皇帝に見染められるためにあれこれ画策したり、他の妃に嫉妬して罠をしかけたりするのをみるたびに、「ちょっと待てよ。後宮においての実際の彼女たちは10代だろう。そこまで大人びたことをするのか?」と思っていました。


 それと同じ現象がこの『烏に単は似合わない』でも、私の頭の中で起きていたということです。


 そうそう、『マイクラ』で地下を掘りまくっていて、「本当の地下の採掘現場って、こんなものじゃない。こんな掘りかたをしていては、命がいくつあっても足りない」との<常識>が邪魔をしてしまい、ゲームを心底楽しめない時がある現象とよく似ています。




 私は「ある年齢を超えた大人には、ライトノベルは書けない」と思っているのですが、それはたぶん人が歳を重ねるほどに身につけてしまった<常識>が、ライトノベルの面白さを削いてしまうせいではないかと考えています。


 ある文学賞を受賞したライトノベルよりの後宮小説に登場する美貌の若い宦官について、「宦官の成り立ちを歴史的に考えて、これはありえない」と、審査員のお1人が真面目に評論されてました。


 そうそうあの山田さまの『言いたいけど言えない? じゃあ俺が言うわ。』のエッセイでも、「皇帝陛下にタメ口きいたら、問答無用で首を刎ねられぞ」って書いてあってような……。




 あらら、本当は『烏に単は似合わない』での作者の仕掛けた<大嘘>について書きたかったのに、まったく違う方向に逸れてしまいました。


 この八咫烏シリーズを読むはまだまだ続きますので、いずれそのうちに書きたいと思います。









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