第4話 『烏に単は似合わない』<1>



 阿部智里あべちさとさんの『八咫烏やたがらすシリーズ』の第1巻『烏にひとえは似合わない』を、一度目に読んだのは何年前だったでしょうか。


 手元にある文庫本が2015年6月の第5刷となっていますが、そんなに昔に読んだとも思えないし、思い出せば、そのころにはカクヨムで自分も中華ファンタジー小説を書いていたはずなので、まあ、3年くらい前のことでしょうか。


 2012年、作者の阿部智里さんは20歳の時にこの『烏に単は似合わない』を書かれて、第19回松本清張賞を受賞されています。


 しかししかし、それほどのお墨付きの小説でありながら、最後まで読んで「えっ~~~!」と叫び、私は本をゴミ箱に投げ捨ててしまいました。私には書店の本棚からおもしろい本を選ぶ嗅覚に優れているというひそかな自負がありますので、読後に思いっきり本を投げ捨てるという経験は、そんなにありません。(笑)




『烏に単は似合わない』の何がそんなに私を腹立たしくさせたのか。


① 自分の今まで常識だと思っていた日本語のほうが間違っていたのだろうかと思ってしまう、時々ひっかかってしまう変な文章。

② どこまで読んでも、頭の中で彼らや彼女らの性格を形作れない、支離滅裂な言動を繰り返す登場人物たち。

③ そして最後の大々どんでん返しにいたっては、「これはどんでん返しなんていうものじゃない。ここまで読んできた読者への裏切り」です。


 プロの書いた小説であれ、カクヨムで拝読させてもらっている素人の書く小説であれ、ここまで本音の感想を言ったのは、初めてです。あっ、ちょっと気分がすかっとしました。このエッセイを始めてよかったかも……。(笑)




 しかしながら、「まあ、それでも松本清張賞だし……」ということで、怒りがおさまったあとゴミ箱から拾って、我が家の本箱の片隅に仕舞い込んでいたのですが、当時中学生だった孫が「ばあば、なんか、読む本はない?」と言うので、「これ、変な本だけど、読んでみる?」ということで貸し出しました。


 しばらくして「あれ、変だったでしょう?」と、悪口で盛り上がることを期待して孫に訊くと、「いま2巻を読んでいるけれど、おもしろいよ」との返事。


 孫は私と違って優しい性格をしているので、どんなに突っ込んで訊いても、1巻である『烏に単は似合わない』の悪口は言いません。ただ、「2巻は、1巻で謎だったことがわかって、おもしろいよ」とだけ。


「えっ、おもしろい? うっそ~~!」と思ったけれど、先日、その孫と書店に行くと、なんとまあ、孫が『八咫烏シリーズ』の8巻目を買ってるではありませんか。


 その姿を目にして、15歳の孫にわかるおもしろさが私にはわからなかったのかと思うと、悔しくて悔しくて。


 その日にすぐ孫より『八咫烏シリーズ』7冊を借り受けて、現在、まずは第1巻の『烏に単は似合わない』を再読しています。




 ……ということで、『八咫烏シリーズ』の第1巻『烏に単は似合わない』再読して、いろいろと思うこと。そしてそれから思考を広げて、ライトノベルという小説のジャンルについて思うことを、今回は連載することにしました。








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