3-14
保護区画の一室にて愛理達は待機してくれていた。
そこには普段は屋敷で待機しているはずの愛美すらいる。
それだけにとどまらず、勇也にも緊急で連絡が行き届いており、勇也も帰還していた。
彼にも漁村が壊滅したという知らせは届いていたらしく、勇者としての力を使うべき時だと判断したのか、一度拠点に戻ってきていたそうだ。
「蓮司!どうだった!?・・・・って聞くのも野暮に思える表情をしているわね・・」
皆が集合している一室に合流した僕を迎えた愛理は、僕の表情からなんとなく事態を把握しているようだった。
僕は母さんと連絡が取れたこと。
そして何よりも母さんから聞かされた、あちらの世界の現状をできる限り分かりやすく説明した。
「そんな・・・」
普段は冷静沈着の明美ですら、予想自体はしていたとはいえあまりにも悲惨な状況となった、日本があった世界の状況に絶句している。
他の皆も似たような表情だ。
「・・・・こうなれば、もはや、ただ考え続けているだけの時間は無いわ。
もちろん考えなしに行動することはできないけれど、多少は大胆に行動しなければ・・・最悪の場合、私たちは日本に帰るどころの話ではなくなる。
日本を失うことになるわ・・永久にね・・・・・」
愛理が火蓋を切った瞬間、皆の眼差しに覚悟と希望が灯る。
「なら僕たちの行動として最優先課題は悪魔の過激派を鎮圧して、穏健派を味方につけて召喚魔法の詳細を教えてもらう事。
もっといえば召喚魔法を用いて日本へと逆召喚を果たして、日本を救いに行くこと。
これが最優先課題ってことでいいね?」
僕の問いかけに皆が無言ながらも全員が頷く。
「あの・・・」
「どうしたの?ヒーレニカ?」
ヒーレニカが・・・
「私は確かにこの世界の生まれであり、蓮司さんたちの世界には関係ないかもしれません。
それでも私にとっては夫の世界が危険な状態になっているのです。
私にもポーションを作ったりとやれることは沢山あります。
なので私も関わらせていただきますね?」
レミリアは
「私もですわ。
確かに私は元々蓮司さんとの政略結婚のために遣わされた存在。
ですが今となっては蓮司さんを愛しています。
ですから私も遠慮するつもりはありませんわ?」
皆嬉しいことを言ってくれる。
「勇也君・・・君は・・」
「聞かれるまでもないことだ。ここで日本を見捨てては何のために勇者の力を授かっているのかも分からない。
当然だが俺も参加するぞ。仮に断られたとしてもだ!」
「ありがとう・・・みんな・・」
そうして僕たちは日本救援に向けても動き出すことになった。
別室にて待機していたアンジェリカさんは、僕たちと共に公爵邸へと向かい状況の説明を行う。
その傍ら明美のいたポジションに里美が交代で入った。
その明美は生徒会長として再度皆の説得に入った。
結論を言えば公爵様に対しての説明の最中に、明美からの早馬の伝令がとどき、
この世界に召喚され、保護された生徒たち・・・
900人近くが全員訓練に参加することになったとのことであった。
理由は言うまでもなく日本を救うためだ。
そしてそれに合わせて、悪魔達との一件が日本に帰るための重要な手段になりうることも説明された。
先の偵察で既に部隊に参加していた生徒たちは全員が即参戦という流れになった。
また保護区画でも積極的に射撃訓練が行われており、戦車の操縦訓練も並行して行われている。
そして僕達100人前後の部隊は再度漁村跡へと向かう。
目的は旧レプラコーン帝国跡へと向かい悪魔達との戦争を行うためだ。
漁村跡に辿り着いた僕たちはアンジェリカさんから説明を受けることになった。
これから行う転移魔法は、ある意味召喚魔法を簡略化したようなものであるとのことだ。
同じ世界、同じ時間軸で場所だけを移動する魔法とのことだ。
いきなり旧レプラコーン帝国の本土に転移魔法を用いて乗り込むと、転移魔法使用時に生ずる光によって気づかれる可能性がある。
そのため本土から3㎞ほど離れた島に転移することになった。
転移する時間は日中帯。
転移魔法自体が光を放つため夜間に行うとその光で完全にばれてしまうため、少しでもバレないようにするために周りが明るい時間帯を選ぶとのことだ。
そして時間になって僕たちは一か所に集まる。
アンジェリカさんが転移魔法を発動すると強い光に包み込まれる。
とはいえ僕たちが最初に受けた召喚魔法のように、目を開けることも困難なほどではない。
あくまでも眩しくて少し目が開けにくいと言ったところだ。
そうして強めの光に包まれながら浮遊感を感じ取る。
数秒間の間その感覚が続いたと思ったあとには、風景が変わっていた。
アンジェリカさんによると転移に成功したとのことだ。
僕は直ぐにアイテムボックスから、アップグレードされた銃器ショップで購入した双眼鏡を取り出す。
今までのようにホームセンターで購入した、レジャー向けの双眼鏡とは訳が違う。
狩りを主目的にし、小さな獲物を見つけるための双眼鏡だ。
障害物がない分3㎞先でも十分に人影や木々を視認できる程度には覗ける。
そうして向かいの海岸線にこれといって人気が無いのを確認して、僕はホッと一息を付いた。
異世界に学校ごと転移させられた ~追放されたけど現代ショップ使って以前より楽しい生活~ きよすいようはねた @jckmlivly
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