第2話 みずみずみずしい

「いいか、よう。アイツの人差し指から出てくる火の玉は高速だが、見えないことはない。冷静に対処すればかわせないことはない。だからいかなる状況でも冷静にするんだ。」

「わかってるYOH。俺たちがあの独身ババァをどれほど警戒していたことかYOH!やい独身ババァ!一年生の頃はボコボコだったかもしれないけどYOH!俺等も対策したんだYOH!今の俺たちにはお前にかつ未来しか見えないYOH!」

「やれやれ。馬鹿は死ななきゃ治らないのでしょうか?それならば遠慮なく」

「「「ぶっつぶす!」」」


 ジョウとようはそれぞれ構えた。しかし、それに対し否弾ひたまは構えは全く取らなかった。


「まあ、こう見えて私は優しいから左手のみで戦ってあげましょう。」

「舐め腐ってやがるな。」

「だが、それでも油断出来ないYOH!」


 そして、審判がフラッグを挙げる。


「それでは、いちについて。はじめ!」


 フラッグが振り下ろされた瞬間に否弾ひたまは弾幕系のゲームのごとく大量に火の玉を飛ばしてきた。これは本当に初見殺しだ。


「だが。」

「俺達は知っているんだYOH!」

「「プラン十二!」」

「【変身】!」


 ジョウは気体に変身した。そして、ジョウとようはそれぞれ右上、左下、と真反対の方向に向かった。これで、弾幕をキレイにニ等分できるということだ。これがプラン十二『弾幕の攻撃は二手に分かれて分散させよう。』だ。


「ふむ、少しは対策してきたみたいですね。ですが、逆に考えれば一人を集中狙いできるという事!もらったぁ!」


 否弾は二手に分断させていた火の玉を全部、陽に放射状に飛ばしてきた。そこまで、陽の魔法の能力は回避能力の高くはない。陽だけだったらこれはもう回避できない。


「だけどこれも!」

「想定済みなんだYOH!」

「「プラン四十!」」


 絶体絶命だったその瞬間、その攻撃を回避した。


「な、何?おかしいですね。陽の【BOOMブーム】にそんな機能はないはずです。ということは。」

「その通りだぜ!独身ババァ!」


 種をいうと、単純にジョウが陽を引っ張っただけだ。これがプラン四十、『陽がピンチのときはジョウが空中に引っ張って逃がそう。』だ。


「でも、それでもおかしいはず。気体は少しでも風が吹いていたら流されてしまう。だから、屋外のここで動かない事ができるわけが………って今……風が吹いていない!?」

「ようやく気がついたか。」

「遅すぎだYOH!」


 なぜここら一体、無風なのか、それは陽の【【BOOM《ブーム》】によるものだ。


「音とは空気の振動………つまり!超爆音を流せばここら一帯の空気を振動させ風をかき消すことが可能なんだYOH!」

「俺との相性は最高だな。」

「ならば、先に陽を消せば良いだけのこと!」


 そして否弾は陽に向かって人差し指を向けて、火の玉をうった。しかし、それは瞬時にきえてしまった。


「何!発動しないだと!」

「いいや、ちゃんと発動しているさ。ただ、のさ。」


 今ここら一帯は無風、ここらの空気は全部ジョウと混じり合っている。よって、酸素濃度が低くなり、火の玉を発動してもすぐに消えてしまうと言うわけだ。そして酸素濃度が低下したということは!


「な……なんだ……息ができない!」

「そうだ!お前の周りはすべて俺の気体!よってお前は息を吸えずに気絶するしかないのだ!」

「勝ち確定だYOH!」

「陽の周りだけは普通の空気だからな。」


 そして、否弾はしばらく悶絶したあと、バタリと倒れた。

 ジョウ達は勝利を確信した。しかし、次の瞬間、その確信は絶望に変わる。


「どれどれ、気絶した顔でも拝むとするかYOH。……………ん?アツっ!地面が熱いYOH!?」

「本当だ。なんだ?まだ何か策があるというのか?」

「フフ……フフフフフ…フフフフフ!危なかった。本当に危なかった!」


 ジョウ達が困惑する中、否弾はユラリと立ち上がった。笑みを浮かべながら。


「私は気絶したのではありません。わざと倒れて、ゼロ距離で地面を温めていたのですよ。いやはや、熱を使う私でも、火の玉を発射する指以外はそれほど熱の耐性がありませんからね。指以外地面につけないのはなかなかに大変でした。でもこれで私の勝ちは確定した!」

「YOH!ただ地面を熱々にしたぐらいでなんだってんだYOH!」

「待て!地面を温めたということは!」


 ジョウは思い出す。理科の実験でということを。それに追加でジョウは思い出した。温まった空気はすることを。


「ヤバい!陽!そいつから離れろ!」

「どうしたんだYOH?」

「どうやら蒸最は気づいたみたいですね。ではさようなら蒸最。お前は成層圏まで飛んでいくんだな!」

「【変身解……ってやばい!間に合わなあああぁぁぁぁぁぁ……………。」

「じょ、ジョウ〜〜〜!」


 ジョウは変身を解除しようとするが、既にジョウは上昇気流に乗ってしまって、陽の無風ゾーンから外れてしまった。だから下手に変身を解除すれば、リングの外に降りかねなくなってしまう。要するに詰み状態になり、そのまま上空まで飛んでいってしまった。


「蒸最ぃぃぃぃ!」

「さて、陽くん、今度は私が君の気絶した顔を見る番ですよ。」

「あ、聞いちゃってた?いや、あれ嘘だから!嘘だからYOH!やめてやめてやめてぎゃああああぁぁぁぁ……!」


数分後


 ジョウは地上で陽がボッコボコにされているのを見て、負けを確信して地上に降りた。

 その時には、そこには全身真っ黒になり、髪はアフロになって大きいたんこぶがいくつもできた、見るも無惨な陽の姿があった。


「……YOH………………後は頼んだYOH……。」

「いや、もう負けたから。」


 ジョウが、陽にツッコミをいれていると、後ろから否弾がやってきた。


「フフフフフ。また私の勝ちですね。」

「なんだよ。煽りに来たのか?」

「そんなゴミみたいなことはしませんよ。」

「要件はなんだYOH?」


 ジョウは率直に要件を聞こうとする。すると、否弾の口からはとんでもない言葉が出てきた。


「今度、一緒にダンジョンに行きませんか?陽も一緒に。」




次回 水inダンジョン

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水になれたら気体にも個体にもなれて最強なのではないか? @Ryotsuan

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