通信があった。

 ベッドから跳ね起きて。

 服を着る。

 その動作の間に、彼を4回ぐらい踏んでしまった。


「ごめんなさい」


「いえ」


 ものすごく低く耐えるような、いえ、だった。ごめんね重くて。鍛えててごめん。


「任務?」


「うん」


 ミントのシガレット。開けた箱が見つからないので、彼の枕元から一箱拝借。


 彼と一緒になっても、戦闘はやめられなかった。心と身体が、もう、そういうものになってしまっている。生きている限り、身体が動く限り人の脅威を排除し続け、どこかで感情を食われてしぬ。そういう人生。それに、彼を守らないといけない。わたしが。彼の脅威を。


 全部、言い訳だった。


 しにたいだけだった。彼に選ばれないことが。それでも彼と一緒に居続けたことが。彼の感情の大きさに呑まれた小さな心のわたしが。ただ、しを求めている。そしてそのためだけに、ただ戦場で敵を殺す。彼が隣にいても、それは、変わることができなかった。映画の負ける側の幼馴染みは、どこかで道を踏み外すか死ぬかだから。それが、抜けない。


「じゃあ、行ってくるね」


 今日も。私の戦闘は続く。

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彼女の戦闘は続く 春嵐 @aiot3110

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