第3話

 森の中を抜けてきたせいか村が明るく爽やかな空間に感じられた。田畑は少なく栗林や梨、桃などの果樹園が整然と広がっていた。家々の戸数はT村にくらべると少なく感じられたが比較的新しい家が多いような気がした。後に聞いたのだがQ村は新しく開墾された村だったらしい。

 僕たちは初めての空間に出あって呆然と立ち尽くしていると、突然自転車に乗った坊主頭の中年男が現れて「おめえらはどこからきたんだ」と低い声で話しかけてきた。僕は少しひるみながらも「T村から来ました」と精いっぱいはっきりと答えた。男は僕らを舐める様にみながら「手に持っているものはなんだ」と威圧的に聞いてきた、僕らは男の前に差し出し「そこの森で撮ったキノコだよ。」男は首を横に振りながら「あ、だめだ、そこのキノコや山菜は村のものだ、全部おいていけ」男の説明によるとそこは村の所有でキノコや山菜は村の貴重な収入源らしい。僕らはキノコが入ったビニール袋を男の前に差し出すと「これで全部だよ」と返事をした。男は納得した顔をしてビニール袋のひとつを取り上げると僕の前に差し出した。「今日はこれだけあげるから持っていけ、これからはだめだぞ。」「ありがとう」と頭を下げながらぼくはトンプクのことが頭をよぎった。「おじさん、聞きたいことがあるんだけど」「なんだ」「T村の小学生の間ではQ村にはトンプクといわれている怖いお兄ちゃんがいると聞いたんだが」男はにやりとして「トンプクというあんちゃんはいないけどトンプクと言われている人は時々村に来るよ」男が言うにはトンプクと言われている人は時々村に来る薬売りの通称らしい。彼が持ってくる薬の名前でトンプクという薬がよく効くのでいつの間にか薬屋さんの事をトンプクと呼ぶようになったらしい。僕は長い間T村の小学生の間で不安と恐怖に思っていたことがなーんだと気が晴れてすがすがしい気分になっていた。僕らは互いに顔を合わせるとなぜか満たされた気分で「早く帰ろう」と森の中に歩を進めた。




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少年クラブ 小深純平 @estate4086

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