第3話いつもの昼休み

〜高校3〜桜〜

授業が終わり昼休みに入る。

この学校では弁当の持参か購買、学食の三択である。

桜は普段購買で昼ごはんを済ませている。

しかし今日の彼は一味違った。

「…財布が…ないだと…?」

そう、財布を忘れたのだ。

そして午後には体育がある。

朝ごはんも食べてきていない。

「尾崎…一生のお願いだ…金くれ。」

貸してではなくくれというところが桜らしいところだ。

尾崎はニヤつきながら言ってきた。

「どうしようかな〜態度がな〜。」

スマホを出して録画を始める尾崎。

地面に膝をつけ土下座の用意をする桜。

しかし、ある生徒に呼び止められる。

「何をしておりますの?」

声の主は西条であった。

桜は得意げに言う。

「土下座して金貰えるんだぜ!この世界ちょろいだろ!」

桜の言葉を聞いた西条は汚物を見るかのような目をし、尾崎はケラケラ笑っていた。

普段弁当を持参しているうえに、金持ちの西条には到底分からない思考であった。

尾崎は録画を止めると、「じゃ、あとは仲良く〜」と言うと去っていった。

なんのために土下座したのか。

しかし、尾崎よりもかねをもつ、太っ腹の友人がすぐそばにいる。

もちろん媚を売る。

「いや〜今日はいい天気ですね〜お嬢様。」

ちなみに雲の割合は10割である。

苦笑いをしながらさろうとする西条。

しかし、出口を陣取り何とか会話を繋げようとする。

「はぁ…なんのようですの?」

財布を忘れたことを西条に伝える。

少し表情が嬉しそうになる西条。

「少し此処で待っててくださる?」

もちろん飯が食えるならいくらでも待つ。

2分ぐらいして西条が戻ってきた。

何やら袋をふたつ持って。

「これ、ひとつ差し上げますわ。」

目を逸らしながら言われてキョトンとする桜。

お金の方が良かったのにと考えているとある考えが浮かぶ。

(西条が持ってきた弁当…それはつまり、高値で雇われたシェフの飯!貰うしかない!)

「まじで!?ほんとにありがとう!」

目を逸らしていた西条はこちらをチラッと見てすぐに顔を逸らし、食べ終わったら弁当の箱を返してと伝えると去っていった。

弁当を開けると庶民的なものが多い。

確かこの学校へ来たのも庶民の暮らしを学ぶため。

私立ではなく公立に来る理由が既に上に立つものの言葉である。

弁当のおかずをひとくち食べる。

美味い。

言ってしまうと悪いのだが、学食や購買のパン、ましてや母の料理よりも全然美味い。

これを毎日食べたい、そう強く願う桜。

しかし、西条がなぜ2個弁当を持っているかは疑問に浮かばない桜であった。

〜高校3〜西条〜

授業が終わりお昼休みに入った。

いつもシェフに作らせるご飯は最近はない。

今日こそ桜にお弁当を渡すため、自分の分を試作品の失敗作を入れたからだ。

しかし、渡せた試しがなく、結局お弁当は執事の吾郎の腹へと行く。

いつも中庭で前野とともにご飯を済ませているが、今日も先に中庭へ行ってもらった。

そう、いつも桜が購買へ行くまで渡すかどうかの葛藤をしてるのである。

しかし、渡せた試しは無い。

そんなことを考えているとある声が聞こえた。

「尾崎…一生のお願いだ…金くれ。」

この声、そして金をせびっている。

桜だ。

スマホを取りだしながら何かを言っている尾崎。

少し尾崎に嫉妬した。

なぜ自分を最初に頼ってくれないのかと。

「何をしておりますの?」

桜がこちらを向くと声高らかに言う。

「土下座して金貰えるんだぜ!この世界ちょろいだろ!」

何を言ってるのか分からないが、とりあえず汚物を見るような視線を送った。

尾崎は「じゃ、あとは仲良く〜」と言うと去っていった。

そして次の瞬間桜が目の前に来て言った。

「いや〜今日はいい天気ですね〜お嬢様。」

窓の外を見ると雲しか見えない。

どういう反応をすれば良いか分からず、苦笑いで誤魔化しがらその場を去ろうとする。

しかし、ドアの前に立ち塞がる桜。

「はぁ…なんのようですの?」

そう言うと、桜がお金をせびっていた理由を話す。

そしてチャンスではと思う。

「少し此処で待っててくださる?」

そう言うと廊下へ飛び出し、お弁当を持ってきた。

ドアの前で息を整える。

そして中へ入り、桜に言う。

「これ、ひとつ差し上げますわ」

桜は少し何かを考えた後、大喜びでお弁当を受け取った。

西条は、恥ずかしくなりその場を直ぐに去ってしまった。

耳を赤くし、顔も少し赤くして前野の元へ行く。

ニコニコしながら前野に言われた。

「お弁当渡せたの?良かったね〜」

嬉しいことは変わりないが、恥ずかしくすぐに話題を変えてしまった。

そして、美味しいと思ってくれていれば良いと考えている西条であった。

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咲き誇る恋の花 oza @ozazon

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