第2話いつもの授業

〜高校2〜桜〜

何とか課題が間に合い、いつもの授業が始まる。

そして次の授業は数学だ。

1番後ろの席ということも相まって桜はいつも寝ている。

隣の席は西条なので指されたら西条に聞けばいい。

そういう考えを持っていた。

そしてあることに気づいた。

シャープペンシルの芯が切れ、消しゴムもないことに。

最初に尾崎にアイコンタクトをとろうとしたが、何故かキメ顔をしているので後で殴ろうと思った。

次に仲のいい前野香澄にアイコンタクトをとろうとしたら、ブーイングが来たためこちらも後で殴ろうと思った。

そんなことをしてると西条に声をかけられた。

「どうしましたの?そんな挙動不審で…」

西条に事情を言おうとしたが、1日に2個も貸しを作るのは嫌だと思ったが、プライドなどないため西条に事情を話した。

「そうなのですの?なら1番最初にワタクシを頼ってくだされば良かったですのに…」

最後の方は何を言ってるか聞き取れなかったが、シャープペンシルの芯と消しゴムを確保した。

「サンキューな西条、やっぱお前が隣だと頼もしいわ。」

感謝を忘れない心。

しかし、感謝した瞬間にまた西条に声をかけられた。

「その…教科書を忘れてしまって…もしよろしければ見せて貰ってもよろしいですか?」

才色兼備などと言われている彼女にも、人間らしいとこがあるな、と思いなが桜は首を縦に振る。

机をくっつけながら西条に言う。

「これで貸し借りなしな。」

ニコッと笑いながら言ったつもりだが、西条にはそっぽ向かれてしまった。

気を損ねてしまったのだろうか。

授業が始まり、板書をする。

教科書に目をやると教科書を見つつ、耳に髪をかける西条が見えた。

その仕草が好きな桜は、見とれていた。

西条は視線に気付くことはなく、板書を続けていた。

そして見とれていたが、名前を呼ばれていることに気がついた。

「桜!何度呼べばわかる!この問題わかるのか!」

ハゲがうるさく騒いでいる。

健司や前野を見るとくすくす笑っている。

そしてもちろんわかるわけが無い。

「サーセン!分かりません!」

自信たっぷりに言えば難を逃れれるだろう。

しかし、そうはいかなかった。

「隣に学年3位がいるだろ。丁度いいから教えて貰え。」

教師として生徒の順位を言うのはどうかと思うが、3位という言葉に何故か小さな歓声が起きた。

そんなことを他所に、西条はニヤつきを隠しながらこちらを見ている。

「そうですわね…一周まわってワンと言えたら教えてあげなくもないですわよ?」

完全にからかっている。

才色兼備なんてデマカセだと言うことを再確認しつつ、恥を捨て言われた通りにした。

後日これが学校中に回っていたのはまた別の話…

〜高校2〜西条〜

数学の授業は嫌いだ。

ハゲ教師は嫌な目でいつも見てくるからだ。

年配の教師からすると頭のいい生徒がいるのはよく思わないのだろう。

でも貴方が隣にいるかは頑張れる。

そう思えた。

西条は桜を横目で見ていた。

しかし、彼はいつもよりも挙動不審だ。

いつも教室でゲームをしているのに今はしていない。

しかも女子とアイコンタクトをとっている。

女子の方は親友だけどこれは許せない。

「どうしましたの?そんな挙動不審で…」

理由を聞いて少しムッとした。

なんでワタクシを1番に頼ってくれないのかと。

恩を売るとかは考えてはいないが、シャープペンの芯と消しゴムをあげた。

「サンキューな西条、やっぱお前が隣だと頼もしいわ。」

やっぱりこの人の感謝の言葉は透き通っていて好きだ。

媚びを売ってるようにも見えなくもないが。

そしてあることに気づいた。

自分の教科書を前野に貸したままということに。

「その…教科書を忘れてしまって…もしよろしければ見せて貰ってもよろしいですか?」

忘れた、というのは嘘だが話しかけるネタがあるのは少し嬉しかった。

桜はニコッと笑いながら首を縦に振る。

机をくっつけながら西条に言う。

「これで貸し借りなしな。」

なんとも言えない人だ、と思いつつもそんな彼の笑顔すら愛おしく思える。

しかし、小学生の頃のように机をくっつけるのは恥ずかしく、そっぽを向いてしまった。

冷静になろう思い板書に集中する。

しばらくたち、隣から視線が来ていると思った瞬間怒鳴り声が聞こえた。

「桜!何度呼べばわかる!この問題わかるのか!」

どうやらハゲ教師が声を粗げているようだ。

「サーセン!分かりません!」

やはり彼は面白い…かもしれない。

「隣に学年3位がいるだろ。丁度いいから教えて貰え。」

いきなり自分を指され少しビクッとしたが、いい機会だと思った。

ニヤついていることを隠しながら、冷静を装う。

「そうですわね…一周まわってワンと言えたら教えてあげなくもないですわよ?」

もちろん冗談のつもりだ。

しかし、彼に維持などは無いし恥もなかった。

彼は言われた通りに一周まわってワンと言った。

それを動画で撮っていた尾崎に後で動画を貰ったのは別の話…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る