咲き誇る恋の花
oza
第1話いつもの朝
お金持ちで頭もいい、そして運動もできる。
そんなんだから友達もできない…そう思っていたのに、君は…
〜初〜
「西条さんってなんでも出来るよね!ほんとに憧れる!」
いつも言われ慣れている言葉に西条咲希は飽きていた。
なんでも出来るのも努力あってこそなのに。
大人に言われる褒め言葉は社交辞令。
子どもに言われるのは悪意のないはずなのに嫌味にしか聞こえない。
「そんなことないですわ。ワタクシは西条の令嬢、このぐらいできて当然ですわ。」
謙遜、あるいは嫌味かもしれない。
でも大人も子どももみんなこれで納得する。
「別になんでも出来るのは凄くないだろ。」
最初は耳を疑った。
無礼にも程があるしこれまで褒めて育ってきたから。
でもよくよく聞くと違った。
「だって西条は努力してんじゃん、俺らと違ってなのになんでも出来るのは違うだろ。褒めるなら努力を褒めろよ!」
心底驚いた。
でも、嬉しかった。
もちろん言った男は罵倒されていたが気にしていなかった。
その頃からだろうか、あの男を意識し始めたのは。
〜高校1〜桜〜
課題を忘れてしまった。
次忘れたら留年と言われたのに…
「健司…課題見せて…」
そう親友の尾崎健司に頼んだが彼もまた、課題をやらない勇者であった。
「誰か助けてくれ…」
そう切実に願う桜百都は自分でやるという考えが浮かばなかった。
そんな中一筋の光が見えた。
教室を華麗に入ってくるのは西条家のお嬢様、西条咲希であった。
幼なじみである彼女なら課題を写させてくれるはず、そう思った桜は西条野本へ駆け寄った。
「西条!一生のお願いだ!課題を写させてくれ!」
一生のお願いという言葉を西条に対して7回目の桜。
いつもは写させてくらる西条は今日は一味違かった。
「桜さん、それで何回目だと思っていますの?いい加減自分でやるという意識をお持ちになられていかがでしょうか。」
彼女にしては辛辣な言葉。
しかし桜には彼女を説得させる手札があった。
そう、次課題を出さないと単位を落とすというもの。
そして次単位を落とすと留年が確定するということ。
それを聞いた西条はすぐに課題を差し出してしまった。
「まじでありがと!持つべきものは頭のいい幼なじみだな!」
そう都合のいい言葉も彼女には嬉しかった。
そんな彼女を後目に課題を丸写しする桜は何とか提出に間に合った。
〜西条〜
小鳥のさえずりを耳にいつもの時間で目を覚ます。
いつも寝ているベッドにいつも見ている天井。
(今日は月曜日だ、桜さんに会える。頑張ろう。)
そう心に思いつつ朝食を食べ、学校への用意をする。
「咲希お嬢様、そろそろ学校へ向かいましょう。」
執事のじいや、吾郎に言われいつもの車に乗り、学校へ向かう。
何となく外を眺めている。
でも本当は眺めているのは外ではなく、桜がいるかを確認している。
「今日は桜さんは居りませんね、もう学校へ着いていらっしゃるのでしょうか。」
そんな吾郎の言葉に驚きつつも冷静に返事をする。
「な、なんでそんなことを聞くの?じいやは運転に集中してくださる?」
冷静を装っていただけであった。
ふふっ、と笑いながら吾郎は西条を学校へ送った。
「おはようございます!西条さん!」
1年生なのに多くの生徒に挨拶される。
おそらく家柄のせいだろう。
そう呆れつつも愛想良く挨拶を返す。
そして挨拶を返しつつ桜がいないか、目で探してしまうことを自覚をしていない。
そして見つけることなく教室に着いた。
そしてドアを開けた途端にある声が聞こえた。
「西条!一生のお願いだ!課題を写させてくれ!」
会えた、そう思っていたものの呆れた言葉に何も言えなくなった。
「桜さん、それで何回目だと思っていますの?いい加減自分でやるという意識をお持ちになられていかがでしょうか。」
強く言いすぎたかもしれない。
しかしこれも彼のため、そう思い我慢をしたが、桜が次課題を出さないと留年ということを聞いてすぐに課題を渡してしまった。
「まじでありがと!持つべきものは頭のいい幼なじみだな!」
そう、ワタクシはただの幼なじみ。
そう再確認させられた気がした。
それでも、彼の感謝が嬉しいのには変わり無かった。
今日こそ思いを伝えよう。
そう気合を入れつつ、今日も言い出せない西条であった。
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