もう二度と逢うことのない夏

藍沢 紗夜

もう二度と逢うことのない夏

風鈴の音が何処から鳴っているいつの間に夏は来ていたのだろう


海のこと閉じ込めたような目をしてる猫が鳴いたら潮風が吹く


来世にはクラゲとかになりたいんだ 綺麗な猛毒、変わらぬ輪廻


塩素の匂いに溺れてしまいそう きみは泡にはならないでいて


夏だからシャボンの香りを身に纏う 振り向いてよ、と切望込めて


横顔を見つめる横顔を見つめるソフトクリームの雫が落ちる


虫刺され隠せない引っ掻き傷が痛々しくて、会いたくない、な


溶け込んでしまえそうなほど茜色 消えてしまうものこそ美しい


消えるまで隣に居たい 風吹いてきみは線香花火落とした


儚さは蛍も蝉も同じでも綺麗じゃないと好いてくれない


夕立に濡れてしまえば頬伝う雫も誤魔化せたはずなのに


きみがいるならそれだけで、と願っても流星群は見つけられない


綿飴の影に隠した赤い頬隠さなくても見られないのに


ゆらめいた赤の尾ひれを焼き付けて死んでしまった祭りの残滓


そびえ立つ入道雲が暗くなり雷雨を連れて声を掻き消す


夏の夜の大三角を探しても見つからないよ、ひとりぼっちじゃ


太陽の引力に焦がれ向日葵は枯れてしまうまで愛し続けた


無機質な音に怯えるあの熱がとうに冷めてしまった夜に


焼け死んでしまいそうなほど眩しくて隣には居られないと悟った


さようなら夏そのもののようなきみ もう二度と逢うことのない夏

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もう二度と逢うことのない夏 藍沢 紗夜 @EdamameKoeda

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