第2話 DQN、死す。

「あぁ、いやだ…助け」


チュプンと人間が潰れる音と同時にチャラ男が殺された。


—5分前—


「キモオタも死んだんだろ? 俺っちもパーちんとエリちとパパのランボルギーニでドライヴしてたら海落ちたんよwwアホすぎww」

「…」

「あれ? んじゃ2人は何処行ったん? こんな使えなさそうなキモオタと寝たきりのイケメンよりエリちとパーちんが一緒のが良かったわ〜」


こんな時にこういう事を考えるのはどうかと思うけど、「バカは死ななきゃ治らない」は完全に間違ってると目の前のチャラ男が証明してしまった。 …寝たきりのイケメン?


「寝たきりのイケメンって!!」

「うっさ! 急に大声なんなってw キモオタの背後にいるだろ」

「…浩暉!」


良かった…って素直に喜べない事かもしれないけど、親の顔より見たイケメンの寝顔が僕の心を僅かに落ち着かせてくれた。浩暉は魘されている様だった。


「浩暉! 浩暉!」

「揺さぶっても起きないぜ、ソイツ…おいおい叩かなくても…」

「浩暉ぃ!」

「…涼太?」

「えw 起きたじゃん。友情パワーって奴?マジ卍じゃんwww」

「良かった…死んじゃったかと思った」


眠そうな碧い目は僕を見た後、チャラ男や背景の遺跡などを見回していた。


「死んでなかったのか、俺達?」

「いや死んだっつーのwww」

「多分、生き返ったんだと思う」

「異世界転生って奴だよww マジ卍だよな棍棒とかwwww 俺原始人かwww」

「彼は…?」


チャラ男が余りにもDQN過ぎて、何だか少し気が抜けて来た。チャラ男の周りの人はさぞかし迷惑した事だろう。


「(D・Q・N)」

「(りょ・う・か・い)」


口パクだけでチャラ男が不安要素である事を伝えると、浩暉は納得して身体を起こした。

こんな状況になって泣き言の1つも言わずに冷静に物事を考えられる…僕の親友ながら本当に凄い奴だなと思う。太陽みたいな明るい金髪をかき上げながら、浩暉はチャラ男に自己紹介した。


「俺は西園寺浩暉、翔陽学園の…意味ないか。高校生だった者だ、あっちは俺の相棒の佐藤涼太。君は?」

「マジ?www 先輩じゃんよろ〜www てか俺中坊なのに背高過ぎwwww」

「…」

「…」


ダメだコイツ、早く何とかしないと。あの聖人とまで呼ばれた浩暉ですら渋い顔をしている。


「まあ良い。それで、何か分かったのか? 異世界転生がどうのと言っていたが」


僕は出来る限り深刻さを隠す様に努めて穏やかに真実を告げた。


「…僕がずっとやってたゲームの世界と、同じなんだ」

「…そうか」


浩暉の端正な顔は更に渋くなった。重度のゲーマーで飽き性の僕が4年間もやっていた変態・玄人向けの超高難易度ゲームの事は当然、ほぼ毎日一緒に登下校していた浩暉も知っている。


「あのドアの向こうには何があるんだ?」


浩暉の指差す方にはボス部屋のドアがあり、その左右には封じられたドアがある。この特異の地形と『選別の秤』が付合する場所はたった一つ。


「『始まりの裁定鬼・ヴィド』が待ち構えてる」

「裁定鬼…角が3本の奴か」

「うん」


3本の角を持つ巨躯の黒い蜥蜴トカゲの頭に5本の腕、二足歩行で長い尻尾の鋭い先端には猛毒が分泌されている。解毒アイテムか魔法がなければ10秒でHP0になる。


「何とかなるっしょwww とっとと行くぞキモオタチームwwwww」

「馬鹿! 待て…」

「お、ポチッとなw」


浩暉の声も虚しく、扉の中央にある宝石をチャラ男が押し込むと重々しい音と共に扉が開いた、そして。


「え」


熱風と3メートルはある巨大な赫い両手剣がチャラ男を真っ二つに切り裂いた。チャラ男の上半身だけが、僕と浩暉の前に飛ばされて来た。


「キシャアアァ」

「4本の角を持つ蛇の頭、4本の腕、4足歩行、赫い2振りの両手剣…こんなボス知らない…」


——裁定蛇・ヴィドリア——初見のボスの名前が紫の長いHPバーと共に視界に現れる。


—現在—


「あぁ、いやだ…助け」


チュプンと人間が潰れる音と同時にチャラ男が殺された。6-7メートルもある巨大な鬼に踏み潰されて。


「…太、涼太!」

「! 浩暉、その剣…」

「アイテム欄の装備に何か武器がある、構えろ」


浩暉は今の光景を目の当たりにしながら、尚も生き抜く為の術を探している。


(そうだ、いつも助けられて来たんだ…)


アイテム欄について考えると視界中央にウィンドウが現れた、《碩学の杖》がある。装備し、それを左手で構える。


「浩暉!」

「あぁ」


今度は僕が相棒を助けるんだ!




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難易度SSSSの神クソゲーに転生してレベル1縛りで全ボス撃破攻略していく地獄 溶くアメンドウ @47amygdala

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