難易度SSSSの神クソゲーに転生してレベル1縛りで全ボス撃破攻略していく地獄

溶くアメンドウ

第1話 理不尽と書いてチュートリアル

tips:この世界で死んだ者の魂は

  『エヴトラの焔』で永遠に灼かれる。


    ——Now Loading…


—何だろう? 視界には馴染みのあるゲーム特有のチップスと現在進行形の『Now Loading』の文字が点滅している。


(僕、死んだんじゃないのか…?)


まさか高校2年生で死ぬとは思わなかったけど、人助けをして死ねた事だけは誇りに思ってもいいのかな? 成績は中の下、運動神経は最低じゃないだけ、目立った特技もなく友達も片手で数えられる程度のコミュ障。


(…もうちょっと頑張っても良かった?)


スポーツ万能・成績は学年首位・先輩から後輩まで誰もが知っている有名人な友達にいつも助けられていた。


(いつか、アイツの事も助けたり出来たら良かったのにな…)


『Now Loading』の文字が消え、『New Game』と禍々しいフォントが黒い炎に焼かれて灰になっていく。


(あれ? この演出、イヴィル・ソウルスのだよな…)


走馬灯にまさか、人生の殆どを捧げた神(クソ)ゲーの映像が流れるとは思わなかった。受験勉強そっちのけで、のめり込んだものだ。


(旧エヴトラ王宮の中ボス・斜陽王を倒すのに丸1ヶ月掛かったんだっけ…懐かしいなぁ)


まさかHP50%以下になったら2分以内に倒し切らないと全快するなんて仕様があるとは思わなかったしね! 43体いる全ボス中2位のHP量の斜陽王でよくもまあそんな心無い事が出来たものだ。


(多段階の初見殺し・仕様を完全把握しないと倒せない攻略難易度の高さ・NPCイベントの進捗具合で変わるボス戦までの道程…)


イヴィル・ソウルスは、あらゆるレビューサイトで綺麗に評価が真っ二つになっている珍しいゲームだ。


(余りあるクソ要素のお陰なのか、圧倒的な自由度に無際限の攻略法、作り込まれた世界観…)


ちなみに国内のクリア者は1,200人程度ではないかと云われている。販売本数200万超えのゲームとは思えない数字だ。


(貰ったストレスの方が多い気もしたけど、何だかんだ好きだったんだな)


もし生まれ変わったり異世界転生したりする事があれば、イヴィル・ソウルスの世界に…


(だけは絶対に行きたくない!!!)


イヴィル・ソウルスは謂わゆる死にゲー・・・・だ、死んで情報を集めてスタートに戻ってまた死んで…を永遠繰り返していくのが当たり前。


(何度でも生き返れるとしても死にたくはないし、一回だって死ねない様ならただの苦行だ)


『はぁ』みたいな名前の配信者が色々な縛りプレイを解説していたけど、「アンタしか出来ねーってww」「はいはい、人間アピール乙」「えっちなのはココでみれるよ♡♡♡」と、ほとんどのユーザーは最初からクリアする事に無関心だ。


(…カビ臭い)


変だ、急に身体の感覚が戻って来ている。


(視界は真っ暗だけど冷たくて硬いものが背中に…)


——選別の秤——


(選別の秤…? まさか…)


視界の中央に禍々しいフォントが現れ、そして消えたと同時にぼやけた景色が見えて来る。


「うそだ…」

「お! 目ぇ覚めたのか」


間抜けそうな男性の声が聞こえて上体を起こすと、真っ金髪のピアスを開けたチャラい男が棍棒でバッティングの素振りをしていた。彼は腰みの以外何も着ていなかった。


「こーゆうのってアレだろ? デスゲームとか異世界転生ってんだろ。イジめてたオタク君から没収したマンガでやってたわww」

「…」


凶悪な顔のチャラ男は明らかにDQNだったけど、そんなの・・・・は対した問題じゃない。


「《貧弱な棍棒》に、《貧者の腰蓑》…」


どっちもイヴィル・ソウルスの低レア武器だ。


「そして《選別の秤》…間違いない」

「お前キモオタか? ブツブツ何言ってんだよ」


棍棒でDQNに頭を小突かれると、僕の視界の左下に見える緑色のゲージが微かに減った。


理不尽チュートリアルだ…」

「あぁ〜? チュートリアルだあ??」


僕は呼吸を落ち着けて呟く様に話した。


「購入者の8割… 160万人が倒せなかったボスを倒すだけの、ちょっとした理不尽だよ」

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