不連続線 ⛈️

上月くるを

不連続線 ⛈️





 あまりにその作家の人生や考え方を知り過ぎると(もちろん作品を通してだが)、ときにエモーションのウェーヴが異様に高く大きくなることがあって当惑する。💦



 ――中学二年の春に、群馬の山村から、東京で暮らす父と継母の住む社宅に出た。



 南木佳士さん『海へ』のたった一行に、ぐいと胸を突かれたのは、亡母に代わって育ててくれた祖母を残して行くことへの申し訳なさ&恋慕が切なく滲んでいたから。




      🍜




 カフェの近くにあるラーメン店へ久しぶりに行ってみたくなったのはそれとどんな関係があるか分からないが、安いなりのチェーン店の味がふと鼻先をよぎったのだ。


 十一時の開店直後だったので、バッグを置く場所もない窮屈なカウンターではなく奥まったボックス席に案内され、卓のメニュー&ポップを見て、あっと息を呑んだ。


 当店は今月で閉店いたします……こんなことってあるんだね、十数年前のオープン以来の長い無沙汰を咎められたように。正午に間があるのに、ほぼ満席だけど……。




      📲




 目と胃壁にまとわりつく、脂の浮いた塩辛い汁の残像を消したくて、ぬるめの湯船に浸かって出ると、スマホに着信表示があった。うつ病仲間(笑)の女性画家から。


 折り返すと、掛けていないとのこと。うっかり押す幼児もいないのにふしぎだね。せっかくだからと近況を訊ねると、打てば響くごとく、くだんの作家の話になった。


 心身の不調に悩んでいたとき、同作家の小説を原作とする映画を観る機会があり、自分も心の病であることを知った、その当時を思い返していたところだったという。


 え、ほんとに?! じつはわたし、先日から未読の作品を読んでいたところなの。なにその偶然!! なにものかに導かれたようなふしぎな話だよね、ほんとほんと。


 人工知能の発達をよそに、科学では解明できないことがまだまだたくさんあるとは聞くが、他愛ないといえば他愛ない、ふしぎといえばふしぎ、そんな出来事だった。




      🪶



 

 ふしぎはそれだけで終わらなかった、じつは飽いていたのだ、作句という作業に。

 入門書の「初心者はまず千句詠むべし」に従い、さらに五千句、一万句と重ねた。


 全五巻の角川歳時記を四回ほど通読し終えると、一人前に(笑)スランプが来た。

 なんだか疲れたな、しばらく休もうかな、鬱勃と湧き上がる怠け心に靡きかけた。


 そのタイミングで、カクヨムさんから初めての短詩型コンテストの発表があった。

 ふと気持ちが動く。若手新人発掘用らしいけど、記録として参加してみようかな。 


 新人の身で連句枠なんておこがましいけど、まあ、参加するだけだから、ごめん。

 テーマ別に八編をアップし終えると、摩訶不思議にも怠け心は雲散霧消していた。




      🌺




 追記:かくて連句三昧の濃密な時間を過ごしたおかげで、一時は聞くもいやだった俳句が再び好きになり、スランプどころか作句習慣がしっかり身に付いた気がする。


 それはいいのだが、現在だけでなく過去の情景も自在に詠む俳句の性質上、連句の編集作業は自ずから来し方の掘り起こしとなり、必然的に半生の記風になって……。


 さらに「親子といっても最初の十八年を一緒に暮らすだけ、子どもにとってはあとの人生の方がずっと長い」ドラマの衝撃的な台詞が耳に残っていたこともあり……。




 ――かき抱く十八年や萩の雨  🍒🐶🎎🧸🍨🎠🥗🍉🩰🌼👒💍🐕💐




 気のおもむくままに、ふらっと詠んでみたら、なんだか💧が止まらなくなって。

 なにこれ? いい歳してまだ子恋なんて、さすがにミットモナイヨと悄然。(;_:)


 けれども、じわっとまぶたに滲んだ💧はなかなか消えてくれずに、妙に湿っぽい小半日を過ごすことになって……思いがけずいろいろあった、六月尽のヨウコさん。




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