第23話 これからの事

 二日後、僕とメイビーの二人はカンザキ公爵家の方々と一緒に帝王陛下の御前に居たんだ。


「魔鏡の森の隠者様の直弟子二人がめでたく婚約したと聞いては余も何かしら祝いをせねばと思ってな。この場には余と宰相しか居らぬゆえにさほど礼儀には構わなくても良いぞ」


 テリス帝国の帝王である、スール・ディメン・テリス三世陛下がそう言うと、カスミさんが


「当たり前じゃない、スールくん。あなたが私たちに礼儀云々を言うのは間違ってるわよ!」

 

 ってぶっ込まれました…… だ、大丈夫なのかな?


「ムウっ、カスミ殿。そ、それをこの場で言うのは控えて頂きたいのだが…… ほら、初面識の者もいる事だし…… 余にも体面という物が……」


 困り顔でそう言う陛下は代替わりされたばかりの二十二歳。カスミさんは前帝王陛下から頼み込まれて、現陛下の家庭教師として幼少の頃より色々とお教えしてたらしく、陛下も強くは言えないんだって。それと、おおやけの場でない場合はカスミさんは陛下に偉そうに言っても不敬に当たらないそうだよ。


「無いわよ、スールくん。私に対して体面を取り繕っても無駄よ」


「ハア〜、分かりましたよ、先生。で、だ、マリーン殿はともかくとして、ハル殿は今後どうされたいのか聞いてもいいか?」


 心底諦めた感じで口調までくだけた陛下にそう問われた僕は、昨夜メイビーと話した事を陛下にお伝えする。


「はい、僕はメイビーと二人で旅をしたいです。この帝国の全てだけじゃなくて、大陸全てや他の大陸にも行ってみたいんです!」


 僕の言葉に陛下は、にこやかに頷かれたよ。


「うん、それは良いな。ハル殿、俺からのプレゼントを受け取ってくれ。宰相、アレをハル殿に」


「ハッ、陛下!」


 宰相閣下から二つの腕輪が手渡されたよ。


「それはな、ハル殿。この大陸だけでなく、他の大陸に行った時にも、ハル殿やメイビー嬢の身分を、このテリス帝国が保証するという証になる。まあ、中には通用しない国もあるやも知れぬが、少なくとも我らの大陸と、隣の大陸では通用する。持っていて損はない筈だ。また、路銀が必要な際には商業ギルドにてその腕輪を見せれば必要な額を用意するからな。緊急時には活用して欲しい」


 す、凄い物をいただいちゃったよ。


「あ、あのよろしいんでしょうか?」


「貰っておきなさい、ハルくん。スールくんにしては良く考えた最良の贈り物だわ」


「にしては、は余計ですよ、先生」


 そんな会話をして、陛下との謁見は滞りなく終わったんだ。


 そして、カンザキ公爵家で


「エエーッ、ハルくん、メイビーちゃん、明日にはもう旅立ってしまうの!?」


「ハルくん、メイビー嬢、我が家はそんなに居心地が悪いかな?」  


 ってカスミさんとデイビッドさんに驚かれ、引き止められる僕とメイビー。

 マリーン【オネエ】さんとマリア姉さんは二人が決めた事ならばって賛成してくれたんだけど、大人二人が必死で僕とメイビーを引き止めるんだ。


「だってまだメイビーちゃんの服も作ってないし、着せ替えも楽しんでないし!」


「ハルくんの体術を見せて貰ってないし!」


 はい、それは又の機会にお願いしますね。


「大丈夫ですよ、三ヶ月に一度はコチラに戻って来ますし、それに来月にあるクリュウ様の結婚式には僕もメイビーも参加しますから。コレでずっと一年も二年も旅に出たままになんてなりませんから、約束します!」


 僕がそう言って頭を下げるのにならってメイビーもお願いしますと頭を下げた。すると、カスミさんとデイビッドさんも諦めてくれたようだよ。

 でも、カスミさんのその後の言葉が……


「ハルくん、ハルくんはこの世界では成人してるんだけど、まだ十二歳なの。メイビーちゃんに至っては十一歳なのよ。だから、二人きりになったからって、不純な事はしちゃダメだからね! もしもしてたら帰って来たときに私には分かるんだから、その時はお仕置きするからね!」


 だったよ…… 僕もメイビーも恥ずかしくて顔が真っ赤になっちゃったよ。


「母上、ハルもメイビーもそんなつもりは一切なかったわよ。逆に母上に言われて意識しちゃってるから、余計な一言だったと思うわ」


 そう、それ! 流石はマリーン【オネエ】さんだよ。僕の事を良くわかってる。


「アラッ!? そ、そうだったの! それじゃ、今の無し! 忘れてね、ハルくん、メイビーちゃん」


 僕とメイビーは苦笑いしながら頷くしか無かったよ。


 そして、翌朝、出立前にマリーン【オネエ】さんから師匠の言葉が伝えられたんだ。


「ハル、私から伝えるようにって師匠からの言伝ことづてよ。【我が弟子に告ぐ! 自由に生きよ! その為の力は既に授けてある! 思うままに生き、愛する者を守れ!】ですって。私とハルしか師匠の弟子は居ないんだから、お互いに師匠の言伝を守って生きてみましょうね!」


「うん、分かったよ、マリーン【オネエ】さん!! それじゃ、行ってきます! マリア姉さん、毎回お土産買って帰るからねっ!!」


「もう! 私はそんなに子供じゃないのよ、ハル! メイビーと二人、無事に居てくれるのが一番のお土産よ! メイビーをちゃんと守ってね、ハル。メイビーも、ハルを守るのよ!」


「マリア姉さん、勿論ですわ! 私もハルを守れるように旅で強くなりますわ! 行ってきます!」



 こうして、僕とメイビーは旅に出たんだ。


 旅に出た僕たちの物語? それはまた別の機会に語らせて貰うよ。









✱導入部分で完結しちゃいます。m(_ _)m

 本当はここからあらすじに書いてある通りに災厄を一つ一つ解決していく予定だったのですが……

 いっぱい考えて設定も細かくして、書いてみてアレ? 思ったよりも楽しく書けてないなぁ……

 なので作者のワガママではありますが、ここで完結とさせて頂きます。

 また続きを書く気が出てきたら、更新が始まるかも知れませんが……


 あ、あらすじを直しておかないと、詐欺になってしまう……(^_^;)

 



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【完結】変なスキルなのでバレると大変です!? しょうわな人 @Chou03

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