第6話 自分の立ち位置

黒板に入試順位が張り出されたんだけど、後ろの方に座ったから見えづら過ぎるな。


「後ろの方の奴らは見えづらいだろうから、帰り際にでも自分の順位を確認してくれ。

じゃあ10位までの名前と点数を早速読み上げるぞ。


1位、アルバート・ノーブル。筆記500点、実技500点。

2位、レイ。筆記495点、実技500点。

3位、ライオネル・ブルート。筆記460点、実技420点。

4位、カリーナ・サラスト。筆記450点、実技425点。

5位、ガイアス・ヴァンサス。筆記420点、実技450点。

6位、ミケーノ・ニャウリス。筆記410点、実技440点。

7位、ミネスト・ローネ。筆記470点、実技370点。

8位、ボート・イグニアス。筆記420点、実技415点。

9位、ナッツ・マカディミア。筆記430点、実技400点。

10位、ブレンダ・ヴァリアント。筆記410点、実技415点。


と、まあ10位までを今読み上げたわけなんだが、今年は既に教師陣では『豊作の年』と言われているほどにハイレベルだ。

特に、史上初の満点合格者がいる上にそれに続く歴代2番目の点数で合格を果たした者もいる。

しかし、学園長も先ほど話しておられたがここから3年間での学び、そして成長は天井知らずだ。

今の順位に満足しないように、上位陣はここからも頑張って欲しい。」


・・・マジか、俺2位かよ。そんで1位アルなのかよ。筆記は割と簡単に解けたし、実技でも試験官の表情見てる感じ悪くないのはわかってたけど、こんなに高いのは予想外だったな。名門名門言ってたし。


そんなことをレイが考えていると、ふと横のアルがいる方から嫌な気配を感じ、チラッとそちらを見ると実にいい笑顔をしたアルが楽しそうにこちらを見ていた。


「さて、レイに問題だよ。幼少期から子供としての楽しみを全て投げ捨てて努力して来て、やっとの思いで周りにいる彼らはこの学園に入学してきてる。


ほとんどが貴族出身である彼らは、家からの重責もあっただろう。一部を除いてそれは血が滲むような努力をしてきただろうね。


それが蓋を開けたら名前も聞いたことがない、よくわからない平民が僕に続いて、しかも3位以下との差を大きくはなして2位に輝いてるんだ。


さて、皆今の感情と次に取るであろう行動はなんだろうね。」


・・・こいつ性格悪っ!わかってるよ俺だって、面倒くさい事になるってことは!


「はぁ・・・。悪魔かお前は。まあ、そりゃ良い感情は無いだろうし、最悪不正とか疑われんのは目に見えてるだろ。


まだ顔は知られてないから、とりあえず捜索始まって見つかったら面倒くさいことになるだろ。」


「そうだろうねぇ。次の質問なんだけど、レイはこれからどうそれを乗り切るつもり?」


そんなことは決まってる。


「答えは簡単、逃げの一手だ。時間が解決してくれるだろ。とりあえず俺は明日から無断欠席を繰り返して、好きに動くわ。」


「ふふふ。レイは元より欠席しまくるつもりだったでしょ。ま、ここまではレイの反応を見て楽しんでただけさ。

顔が広いのが僕の取り柄みたいなとこあるから、それとなくはぐらかしながら皆が納得してくれるように上手くコントロールしとくよ。

だからレイは好きに遊んでて良いよ。」


こいつは天使と悪魔の二面性を持っているようだ。確かにこいつの悪魔のような一面も見てしまったが、後が天使過ぎたので見なかったことにしといてやろう。


「アル、素晴らしいよ。最高の友達であるという表彰を行いたいくらいだ。

俺は今涙を流したいほどに感動している。ここまで出来た人間がいたのかということにな。」


「是非その表彰を受けたいものだね。後世に語り継ぐ僕の功績の一つになるはずだよ。」


お互いに認め合い、美しい友情を育んだ俺たちはガッチリと握手を交わし、担任の話を聞くことにした。


ふむ、なになに?来週に必修である模擬戦を行うため、その日は確実に学校に来るように、か。


ふむふむ。


アルの嘘つき!!早速あるじゃんか!!


非難めいた視線を向けた俺を涼しい顔で流すアル。


やっぱりこいつは悪魔である、という結論を俺が出そうとしていると、


「だが、それ以降1学期では必ず出席しなければならない必修授業はない。各々の予定や事情との折り合いをつけながら、なるべく学ぶ場を増やせるように各自考えるように。」


楽園はここにあったのか。アセント王国立楽園に今すぐ改名しよう。


「アル、俺は今から1週間自分と見つめ合い、自分を高める時間を作って来週の模擬戦に参加する。

その後村で凝り固まった思想を、王都の最先端をいく文化で洗い流すために、泣く泣く授業を休んで、見聞を広めてくる。」


俺が真面目くさった顔でそう言うと、


「物は言いようだね。何か面白いことする時はちゃんと僕のことも呼ぶんだよ?

その時は僕も泣く泣く授業を休むからさ。」


と、アルは呆れたように、でも面白そうに笑いながらそう言った。

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冒険者は、我が道を行く カット @zero90

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