第5話 なんだか嫌な予感

「うぉ・・・でかい部屋だな。後ろの方とか声聞こえるのか?」


レイは空いている席に座りながら、教室というよりもはや講堂と呼べるほどの部屋を眺めながら疑問を口にした。


「拡声の魔道具を使ったり、風属性魔法が得意な教師は魔法で対応するらしいよ。

あと、声がめちゃくちゃデカくて地声でいける名物教師もいるらしいけど・・・。


ま、50人いると普通の教室じゃ小さくて結局この大教室を使うしかないからしょうがないね。

2クラスに分けることも出来ないらしいし。」


「おぉ、魔道具か!!本で読んでたけど村には無かったから気になってたんだよな。こっちには魔道具ってたくさんあるんだろ?」


「あぁ、もちろん。式場からここまでの道のりでもたくさん設置されてたよ。ほら、あれとかね。」


アルが指差す先の天井には白く四角い大きな箱が設置されていた。


「あれは送風機って言って、温風も冷風も出せて室内の温度管理が出来る魔道具だよ。


アセント王国は魔道具において世界の最先端を走ってるからね。他にも色々と目にする機会は多いと思うよ。」


「あれが魔道具かぁ。確かに見た目普通の箱だけど、ちゃんと見ればすげぇ繊細な魔力纏ってんな。


今の俺の魔力操作じゃ無理そうだな。」


「っ!!・・・ふふ。レイは魔力がしっかりと視えてるんだねぇ。

どれだけの時間を魔法の訓練に費やしてきたんだい?地味できつい努力の道のりだったろうに。」


「ん?そんなきつかった覚えはないな。

魔法の訓練や練習っていうより、魔法で遊んでたって言う方が近いしな。

娯楽もない辺境の村だと、最低限の親の手伝い以外は暇でな。普通子供は集まって遊ぶんだが、俺はあんまり馴染めなかったから、村長の家の書庫を読み漁ることと、魔法で色々試行錯誤して遊ぶことが俺の娯楽だったんだよ。」


「それでも魔法の練習は緻密で繊細な作業が必要だから、慣れるまでは精神的にきついんだけどね。


にしても、対策なしで筆記試験を突破して、多分僕よりも魔法の実力が高いとなると、このあとの発表が楽しみだねぇ。」


「なんだ?この後の発表って?」


「毎年恒例で、入学式が終わった後の教室での顔合わせで発表があるんだよね。


ふふふ。何の発表かはその時までのお楽しみ〜。」


だ、だりぃ・・・。サッと教えろよ。めっちゃ気になってきたんだけど。


ただ、なんか嫌な予感するな。こいつの含み笑い。


この予感当たりませんように。


ガラガラッ。


ん?誰か入ってきたぞ。中年のおっさんだけど、めちゃくちゃ体引き締まってるな。もしかしてしなくてもあれが担任か。


「2、4、6、8・・・50。よし、しっかり揃ってるな。声が聞こえてないやつはいるかー?・・・いないな。

初めまして、俺はクラウド・バルセルクだ。今日から3年間お前らの担任になる。この顔と筋肉をよく覚えておくように。」


なんだ筋肉を覚えるって。とんでもない脳筋が担任になったっぽいけど大丈夫か。教師もやばいやつで揃えてんのかここは。


「去年までアセント王国騎士団の第一大隊隊長をしていたんだが怪我をしちまってな。これからは後進の育成に力を入れようってことで、お誘いをいただいたこの学園で教師をすることになった。

科目としては剣術を担当するが、何か質問があればいつでも聞いてきてくれ。」


まあ、その見た目で魔法専攻な訳もないわな。でも身に纏う魔力密度がかなり高いな。魔法の方も一流と呼べるのは間違いないみたいだな。


まあ、でも俺は剣術なんていう興味がない上に疲れるものをやるつもりはないし、魔法のことで聞きたいことがあったら専門の教師に聞くからあんまり関わることはないかな?


「お前らの自己紹介も聞いていきたいんだがなんせ50人もいるからな。まあ、これからお互いに知っていければ良いと思ってる。

で、早速なんだが毎年恒例でやらなきゃいけないみたいだからこれをやっとくぞ。お前らの中には待ち望んでいた者も多々いるだろう。

これより入試順位の発表を行う!!黒板に順位表を貼った上で10位までの読み上げを行う。

それ以下は各自確認するように。」


横をチラッと見ると、アルがニコニコと楽しそうに笑っている。


俺の嫌な予感警報が鳴り響いている。こいつの楽しそうな笑顔が怖い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る