2話
だんだんと日が登り始め少しづつ空が明るくなり始めた頃2人組で巡回していた騎士の片方が何かを思い出したように相方に声をかけた。
「そうだ。なぁ、この前こっそり買っておいたいい酒があるんだ。たまにはお前も一緒に飲まないか?」
「そうだな。いつもは飲まないがたまには酒も悪くないっ?!」
そんな話をしていると、突然山の木が生い茂る影の中から音もなく矢が飛んでくると、矢はそのまま喋っていた騎士の頭を貫通し、そのまま地面に突き刺さった。
「なっ?!誰だ!!」
もう1人の騎士も突然の事で反応が遅れ剣を構え矢が飛んできた方向を向いたが、背後に音もなく現れた外套のフードを深く被った人物に気がつけず首を切り落とされた。
外套のフードを深く被った人物は首を切り落とすのに使ったナイフの血を振り落とすと外套の中から小さな笛を取り出し音を鳴らした。
笛の音は何故か辺りによく響くきしばらくすると山の中から30人以上の統一性が無い、防具を纏っている者達が集落の中に向かっていった。
集落に向かった者達とは別に真っ赤な髪をショートにした女も山の中から出てきたが、フードを深く被った人物の近くで足を止め声をかけた。
「ご苦労様。次は詰所の方の騎士を殺して来てちょうだい。終わったら詰所の中に例のモノが無いか調べて無かったら集落の中を探すのを手伝いなさい」
女に指示されるとフードの人物はコクリと頷き、詰所があると思われる方向へ音もなく走り去っていった。
ーーーーーーーーーー
朝日が登り始めた頃リオとノエルは自分の部屋のベッドでまだ眠っており、リンはいつも通り朝食を作っていた。
ロッドは仕事の支度をしながら何かを思い出した顔をして申し訳なさそうにリンに声をかけた。
「あ、リン今日の夜は同僚に酒に誘われているんだ。だから、夕飯は俺の分は作らなくて大丈夫だ。伝えるの遅れて悪い」
リンはロッドに少し呆れた顔をしたが笑顔で返事をした。
「もぉ、そう言うのはもっと早く伝えてよね。でも、最近お酒飲んでなかったんだし今日は楽しんできていいわよ」
「悪い。ありがとう」
そんな話をしていると、朝食を作っている匂いに釣られ、リオとノエルが起きてきた。
「おはようございます」
「お母さん、お父さん、おはよぉ」
完全に起きれていないノエルの手を引いて起きてきたリオの2人を、リンは微笑ましく思いながら返事をした。
「おはよー、2人とも朝食並べてる間に顔洗ってきなさい」
「おはよう、相変わらずノエルは朝が弱いなぁ」
リンに言われリオは目をこすっているノエルの手を引きながら洗面所の方に連れていった。
リオとノエルが顔を洗い終わり食卓に着いたその時、カーンカーンと警報の鐘の音が集落中に響き渡った。
その音を聞いたロッドは朝食を軽く摘み、仕事に行くために玄関先まで持ってきていた自分の剣を掴み玄関の扉を開けた。
「リン、2人を頼んだ。詳細はわからないが警報が鳴ってるから俺は急いで詰所に向かわなきゃいけない。もしもの時は2人を連れて街まで逃げてくれ。じゃあ、行ってくる!」
「わかったわ。あなたも気をつけてね!這ってでも生きて帰ってきなさい!2人のことは任せなさい!」
そう言いリンはロッドを笑顔で送り出した。
その会話にしている間ノエルはリオ異変に気づき、少しでも安心して欲しいと思い抱き締めていた。
5年前、リオの父親が討伐しに行った日も今日と同じ警報の鐘が鳴り響いており、リオの父はその時に警報の原因となった魔物と相打ちになり帰ってこなかった。その時の事を思い出してしまい軽いパニック状態になっていたがノエルに抱きしめられた事で少しづつ落ち着いきていた。
リオの異変にリンも気づいていたが、ノエルが抱きしめ落ち着いてきているのを見て自分も少しでも安心させようと思い微笑みながら声をかけた。
「大丈夫よ。ロッドも騎士の人達もみんな強いんだから帰ってくるのを待ちましょ?それに、お腹が空いてちゃもしもの時に力が出ないから今は朝食を食べましょうか」
2人はリンの言葉に頷き、少し不安に思いながらも残りの朝食を食べた。
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