君とならどんな未来も。
10LL
1話
元々、人間だけが生活していたが、今は様々な種族が協力し合い暮らしているミルズ王国。
その南方にあるミルズ山脈の麓に作られた集落には、中年から高齢の者が多く住んでいるが、そんな集落では珍しい2人の10歳の子供、茶色の髪をショートカットにした赤い瞳の少女ノエルとグレーの髪の琥珀色の瞳の少年リオが住んでいた。
2人は赤子の頃からの付き合いで、リオは両親が他界してからノエルの家族に引き取られた事もありいつも仲良く一緒に遊んでおり、その様子を集落の皆は微笑ましい雰囲気でいつも見守っていた。
そんな環境で2人は集落の開けた場所で子供サイズに作られた木剣を持って打ち合っていた。
「もう!リオ!もっと力いれて振ってきてよ!」
リオの木剣に自分の木剣をぶつけながらノエルはリオがなかなか反撃してこない事に不満を感じ文句を言った。
「うぅっ、だって当たったら痛いじゃん!」
「私に当たるんだから痛くないでしょ!」
そんな話をしながら2人が遊んでいると家からブラウンの髪を肩まで伸ばした黒い瞳のすらりとした女性、ノエルの母親のリンがリオ達に近寄ってきた。
「ノエル!リオ!そろそろ夕飯にするからお家に帰っておいで!」
2人はリンに大きな声で呼ばれた事に気がつき、遊ぶのを辞めると服に着いていた土などを払いながらリンの方に向かった。
「うん!お母さん今行く!」
「リンさん、今行きます!」
そう返事をして2人はリンの後を追って家に向かった。
リオとノエルはリンに続いて家に入ると手を洗い、ノエルはリンが作った料理を皿に盛り付け、リオは盛り付けられた皿をテーブルに運んでいた。
すると、ちょうど料理が並び終えた頃に家の玄関が開くと中から金髪を短くし赤い瞳で防具を着け帯剣したガタイの良い男、ノエルの父親のロッドが入ってきた。
「ロッドさんおかえりなさい」
「お父さん!おかえり!」
「あなた、おかえりなさい。今配膳してるから早く着替えてきて。ご飯にしましょ」
「おお!ただいま!いい匂いがしてお腹ぺこぺこだ!」
そう言うとロッドは部屋に着ていた鎧と腰に下げていた剣を置き、3人が座って待っているテーブルに座り、全員揃ってから夕飯を食べ始めた。
「ノエルもリオもあと2年くらいで学園に入学する事になるが何か将来やりたい事は決まってるのか?」
食事をしながらロッドは、最近考えていた事を2人に聞くと、ノエルはもう決まってるようで悩んでいなかったが、リオはなかなか悩んでいる様子でそれを見たノエルが先に答え始めた。
「私はあるわよ!お父さんみたいに強くなって色んな世界を見てみたいの!!」
ノエルは赤色の目をキラキラと輝かせながら答えるとリオもまだ少し悩んでいるようだが答え始めた。
「僕はまだやりたい事は決まってないですけど、父やロッドさんみたいに強くなりたいです」
リオとノエルの夢を聞いたリンとロッドは微笑みながら応援する言葉をかけた。
「ならノエルもリオもしっかり食べて、しっかり寝て丈夫な体を作って勉強も頑張ったらきっと叶うわ」
「そうだな!でも親としてはノエルはもっと女の子らしくなってもいいとは思うがな…」
ロッドは2人を応援しながらも娘のノエルの将来を少し心配したような顔で見ていた。
「私にはリオが居るからいいのよ!」
ノエルはロッドを見て喋りながら隣の席に座っていたリオに抱きつき、リオはノエルに抱きつかれた事で顔を赤くして、ロッドはどこか難しい顔をしていた。
「こーら、食事中に行儀が悪いわよ?」
そんな話をしながら4人は食事を楽しみ、その後お風呂に入り寝床についた。
ーーーーーーーーーー
その日の夜、リオ達や集落の皆が寝静まった頃、集落の周りを警戒に当たる2人の騎士がいた。
集落の周りに設置された魔物避けの効果でよっぽど強力な魔物以外は近寄ってくる事はないため、騎士達はいつも通り何事もないだろうと思いながらも決められた巡回ルートを歩いていた。
「いつもやっている事だがやっぱり魔物避けが効かない魔物なんてほぼ出ないから暇だなぁ」
「それでもちゃんとやれよ。それとも、お前は忘れたのか?5年前の魔物のことを…あの時はレックスさんが相打ちであの魔物を倒したおかげで皆助かったんだ」
「あぁ、まぁ、そうだな。すまん」
そんな会話をしながら騎士2人は集落の周辺の巡回を再開した。
森の中で音もなく動く影には気づかずに。
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