第12話
店員と最後に話してから15分くらい経ったのだろうか。
コワードラビットの丸焼きを食べ終わってしまったので完全に暇になってしまった。
「結構待たせてしまったな」
急に背後からおっちゃんに声をかけられて、思わず息を飲んでしまった。
そんな俺の姿が面白いのかおっちゃんは大笑いしている。
「これ、鑑定しましたよ」
俺は数打ちのような短剣を見せる。
すると、おっちゃんは大笑いをやめ、自慢げにニカッとした笑顔を浮かべた。
「その剣については後にして、今グレッグと飲んでるんだ。来るか?」
「グレッグさんって誰ですか?」
俺は先ほどから気になっていたことを聞いてみる。
「あぁ、ギルド長だ」
おっちゃんはさも当然かのように重大なことを言ってきた。
「お酒飲めないですけど…」
「それでもかまわん。わしに話したいこともそこで聞こう」
おっちゃんについて行き酒場の奥の店員が下がっていった場所に着くと凸凹した壁があった。
おっちゃんは頭を掻いて「どうだったかな…」とブツブツ言いながら壁を触っている。
ガチャ…
壁の一部が変形し引き戸になった。
普通にすごい技術だ。
「グレッグ!このエルフがサーヴァだ。今日このギルドに登録した新人だぞ」
戸を引くとまぁまぁのスペースが広がっていて机の上にはすでに空になった酒瓶が6本と残り半分くらいの瓶が4本ある。
机の向こう側に座っているガタイのいいイケオジがグレッグさん、ギルド長だろう。
「君がサーヴァくんだね、ヴェルクが初めてエルフに武器を売ったと聞いたから気になってたんだ」
やっぱりおっちゃんはエルフがあんまり好きじゃないんだな。
「魔法使いのサーヴァです。お世話になります」
「俺はここのギルド長を務めてるグレッグ・ジャクソンだ。よろしくね新人くん」
俺はギルド長と手を交わした。
コンコン…
「すみません。ギルド長、ミネルブのギルドから連絡が来たので対応お願いします」
「ヴェルク、用事が済んだら戻るから残りはまだ飲まないでくれよ」
そう言ってギルド長は仕掛け扉じゃない方から出ていった。
「そういえばわしは自己紹介を忘れてたな、ヴェルクだ」
「鑑定で見えたからおっちゃんの名前はわかります」
おっちゃんが少し口を閉じて
「わしに対しては敬語を使わなくていい、砕けた言葉遣いで頼む。お前さんは常連になりそうだからな」
俺もおっちゃんって呼んでるのに敬語だとなんか変だと思ってたから砕けた感じで喋っていいのは助かる。
「じゃあ、この剣の名前はどういうことなんだ?数打ちのような短剣って」
「これはだな…。まぁ、普通に打った短剣だな。100本の数打ちで打ったつもりだったんだが最後の一本だからって気持ちで打ったらちょっと強くなっちまった」
なんだそれ。
「ちょっとってどれくらい違うんだ?」
ギルドの短剣を使ったことがないからわからないがちょっとでは済まない強さだと思う。
ちょうど胸の辺りを背中から刺しただけで一撃でコワードラビットを倒せたからな。
「確か、この短剣はギルドの2倍の400Gで売ったが普通に買ったら1000Gくらいはするんじゃないか?他の数打ちは400G以上でも以下でもない性能だからその一本だけ特別だな」
いやいや…安売りしすぎでは?
俺が無言で短剣をまじまじと見ていると
「わしの店を探したか?」
そういえばそうだ
「場所は間違えてないと思うけど見つからなかった」
「わしの店はわしが建物の近くにいることとそこに店があることを知らないと見つからない。隠れた名店という言葉があるがわしのは本当に隠しているんだ!」
と言いながらガハハと大声で笑っている。
少し可笑しかったので釣られて笑ってしまった。
「あの店がお前さんを覚えたら、わしがあの店にいなくても入れるはずだ」
俺がその言葉にきょとんとしていると
「まぁ、次行けばわかる。5000Gだったっけか?余裕ができたら…そうだな、先に酒場を見にこい。多分いる」
店にはデフォでいないのかよ。
心の中でツッコミを入れると
「わしはドワーフ、酒がないとやっていけんからな。仕事場はわしらにとって神聖な場所だから仕事道具以外は置いていない。だから酒場に来てる、そういうことだ」
心の声が聞こえているかのようなコメントだな。
「他のドワーフはどこにいったんですか?」
酒場を覗いたときの違和感を聞いた。
「今頃仕事場にいるんじゃないか?」
おっちゃんはのんきにそう答えた。
「おっちゃんは?」
「わしは基本オーダーメイドだからな…納品が一昨日終わったから自分が打ちたい時間に打つだけだ」
やっぱり凄腕なんだな。
多分掲示板とかに情報があると思うし、おっちゃんのことも調べてみるか…
「まだ、5000G稼いでないんだけどギルド長が戻るまで待ってた方がいいよね?」
「まぁ、そうだな。グレッグと話す機会も新人なら珍しいだろうから、5000Gなんて今日明日で集められる思ってないからいつでもいいさ」
ガチャ
「すまんすまん、隣町のギルドでちょっと問題が起きたから職員を少し派遣してきた」
こんな昼間から酒をドワーフと飲む人が仕事はちゃんとするんだなと俺の中の勝手な評価が上がった。
「で、そんなことはいいから酒飲もうぜ」
おっちゃんが隣町でトラブルが起きたのに飲み会を再開させようとしている。
「そうだな、飲むか」
おい、飲むのかよ。俺の中の勝手な評価が下がった。
新作VRMMOを始めたらユニーク種族「神の卵」になったけどそんなことは気にせずAGIに多めに振って最速最強になります。 ヴィラ・トイフェル @villa_teufel
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。新作VRMMOを始めたらユニーク種族「神の卵」になったけどそんなことは気にせずAGIに多めに振って最速最強になります。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます