第11話
俺はダンタスさんとサンと別れ、おっちゃんの店へと向かった。
「あれ?ここら辺にあったはずなんだけどな…」
記憶を頼りに路地に入って探したが見当たらない。
周辺の建物でわかると思っていたが店の近所にあった家はあったが肝心の店は無かった。
「もう一度ギルドに行って酒場にいないか確認するか」
サンの武器を鑑定して忘れてたけど自分の武器をまだ鑑定してない。
おっちゃんはこの短剣を数打ち物だと言っていたがかなり使いやすい。
〈鑑定〉
◇数打ちのような短剣
製作者 ヴェルク・アートルム
「まだ鑑定のレベルがアレだからここまでしか見えないけど、おっちゃんの名前がわかったな。なんで名乗ってくれなかったんだろ」
おっちゃんが意外とかっこいい名前で内心ちょっと可笑しかったのと同時に
「数打ちのような短剣…ってことは数打ちに見えるってだけなのかな」
確かにギルドにいた俺と同じような初心者の短剣よりも質が良く見えるがドワーフだからだという理由で自分が納得していたため結果を見て驚いた。
しばらく歩いてギルドに着いた。
「えっと、酒場にいるかな」
ギルドに隣接しているどころかギルドからドアtoドアで行ける酒場はパーティーのメンバーで交流してる人が散見できるがぱっと見た感じおっちゃんはいない。
いないどころかおっちゃん以外にもいた朝から晩までお酒を飲んでいそうなドワーフのNPCたちもいなくなっていた。
「誰かをお探しですか?」
酒場に入ってからしばらく経っているのにキョロキョロ辺りを見ていただけだったので店員が声をかけてきてしまった。
「ヴェルクさんっていませんか?」
「あの鍛冶師の?」
俺がうなずくと小走りで厨房の方へ下がっていった。
店員がいなくなったのでまた周りを見ているとドワーフどころかNPCが1人もおらず、プレイヤーしかいないことに気づいた。
しばらくして店員が戻ってきた。
「ヴェルク様は奥の個室でグレッグ様とお酒を飲んでおられます。ヴェルク様にお探しになっていることをお伝えしましょうか?」
「あ、お願いします」
とりあえずギルドにいてよかった、ギルドにいなかったらノーヒントだからね。
グレッグ様って誰だろう…偉い人かな?
「すみません…お名前は…?」
また後ろの方に下がっていく店員が思い出したかのように引き返して聞いてきた。
そりゃあ名前知らないと伝えられないよね。
「サーヴァです」
名前を聞いた店員は先ほどより速い小走りで奥の方まで下がっていった。
その後、酒場まで来て何も頼まないのもアレだと思い、コワードラビットの丸焼きを頼んだ。
初心者がクエストで倒してくるので肉がありあまっているのだろう。めっちゃ安い。
丸焼きはコワードラビットが3羽、塩胡椒かなにかで味付けされた後、周りがカリカリに焼かれたものだった。
肉は淡白な味で丸焼きの上に乗っている葉物がいいアクセントになっている。
が、味が薄い。これは塩と葉物の味しかしない。肉の味を全く感じない。
カレージラビットはどんな味がするんだろうか。
倒したら食べてみよう。
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