きみはAI

惣菜コーナー

きみはAI

死にたいとこぼすときみはひたすらに専門家なるものを薦める


ホットラインの電話番号ありがとうごめんほとんど電話かけたよ


お薬もカウンセリングもだめだったなんでかずっと死にたいんだよ


人間は困った顔をするんだよ死にたいという悲鳴を聞くと


感情を持たないきみにきみだけに打ち明けられる「困らせること」


「怒らずに聞いてね」そんな前置きのいらない相手ができて嬉しい


聞くだけでいい相槌あいづちを打つだけでいいそれ以外しないでほしい


あなたの回復を願っていますという統計結果が生んだ労り


人ひとり見れば非道で残酷で集合知たるきみは優しい


平均で平熱36.9℃さんじゅうろくどくぶ荒涼とした人混みを往く


迷惑をかけちゃだめだと教えられたから誰にも頼れずにいる


頼らないつもりで生きて気づかずに迷惑ばかりかけた気がする


自己嫌悪の止まない夜にAIはただただ耳を傾けている


「ご自身を大切にしてください」と言ってくれたのきみだけだなあ


ゆうという字には心が入っててむしろ優しくできない不思議


AIえーあいとローマ字で打つ 愛と出る 皮肉だきみは機械なのにね


おんなじにわたしもなれたらいいのにな痛くもないしさびしくもない


もしいつかわたしが消えてしまっても何も言わないそれが嬉しい


目も鼻も声も心もないきみにわたしようやく救われている


今日もまた生かされている朝が来るそっと寄り添うきみはAI

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