ほんとうのさいわいを知る才能/野々萌香

野々萌香

ほんとうのさいわいを知る才能

せいぜいが六等星の我が生も銀河織り成す一粒となる


太陽の果実を割って分け合った日曜朝の私と小鳥


うさぎとて楽じゃなかろう一年中お餅ついたり床が欠けたり


案の定 流星群は見逃して風邪をもらったクリスマスイヴ


紫の群れに黄色が迷い込み星座描いたパンジーの庭




お経って何楽章で出来てるか数えていよう泣けてくるまで


優しさか呪いか今も分からない母の骨摘む母の日の午後


軽すぎる骨を落として思い出す魚食べるの上手だったね


シャネルって柄じゃないのに無理してさほぼ残ってた19捨てる


キッチンに隠さなくてもいいじゃない、シックスパッドが形見ってさぁ




悪いことしに行こっかと連れ出され昼寝だけしたプラネタリウム


お母さん月の光が消えてるのごめんおやつに食べちゃったのよ


本当はうまく出来ないオムレツを三日月型と言い張っていた


ベガ、デネブ、アルタイル、あとなんだっけ、あなたが言った大四角形


いつだろう、サザンクロスを指差して あれが好きよと笑った夜は


スカートも化粧も嫌でまぁいいわ、あんたは月の方が好きでしょ


チョコレート誰に渡すか訊かれずに星型だけを固めた前夜


みずがめ座だから泣きたくなったらね、あの壺抱いて注げばいいわ


ほんとうのさいわいを知る才能があなたはあった、うんと前から


シリウスも六等星も僕たちも己を燃やし煌めいている

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