冒険者と長杖
長いシャフト、持ったときに握る部分からさらに肘まで延長されているであろう長さのグリップ。両手持ちのためにシャフトの途中にはめ込まれた長方形のグリップ部品。
クーゲルの新しい杖の姿がそこにあった。
「古い方は?」
自慢げに背負ってギルドにやってきたクーゲルに、レニーは聞く。
「参考にしたいから譲ってほしいってんで、エレノーラ嬢に譲った」
言いながら掲示板から依頼書をはがす。
それはアーマードリザードスの討伐依頼だった。
「レニー、俺は近々ここを出る」
「そうなんだ」
「あぁ、武器をつくってもらう目的も、お前に会う目的も果たせたしな」
ふた月ほど、クーゲルとは魔物討伐をしてきた。主にクーゲルが誘ってきての事だったが、彼の人柄と魔弾を使う者同士ということもあり、相性は悪くなかった。レニーが前衛、クーゲルが後衛で固定されていたのもある。
その間にレニーは早撃ちをクーゲルに教え、クーゲルはレニーにいくつか魔法を教えてくれた。
「コイツをお前にやるよ。教えた魔法の魔法紙だ」
数枚の紙を渡される。
「いいの?」
「俺は完璧に覚えたからな。お前が忘れたときにそれ読んで思い出せ」
「ありがとう」
魔法紙をマジックサックの中にしまう。クーゲルは両手を腰に当て、笑った。
「最後の依頼、付き合ってくれよ」
「もちろん。終わったら打ち上げしよう。お返しにおごらせてくれ」
互いに拳を突き出す。突き合わせた拳を見ながら、レニーも口の端を吊り上げた。
「また縁があったときは頼むぜ」
「こちらこそ」
――依頼は成否は言うまでもない。
そうして、バレットウィザードの男はギルドロゼアを後にし、新たな冒険に出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます