24話 剣士の顔
そう思いませんか?という見知らぬ少年の言葉にどこか親しげに輝き返す自身の魔唄剣に釣られてレンは「――初めまして。で、いいのかな?」と初対面のあいさつに質問を重ねた。
声を掛けた途端、異質な魔導力が消え、魔唄剣も輝かなくなった。
そして目の前の少年は少し慌てた素振りで、隠すように魔導剣を収めた。
何故だろう振り返った時と何処か雰囲気が変わったような気がするが・・・
それに彼は視線をどこへ向けているんだ?魔導剣を収めてから、こちらへ目を合わせてこない。そこに透明な何かが居るのだろうか?
「勘違いさせいたらごめんなさい。僕のさっきの言葉は、貴方に言った訳じゃ……ない、んだ……」
ジオラスは少年の瞳を見て既視感を覚えた。
帝都英霊墓地で出会った帝国騎士の女性と似通った瞳だった。
マリアと同じ紅い瞳の少年は剣をゆっくりと引き抜き、見せる。
「勘違いではない――先程までこの剣が君に反応していたから」
一目見て母の剣、
現代の技術では再現出来ないであろう、翼の生えた羊を模った美しい
その剣身からは今まで所有してきた者たちの弛まぬ努力と幾つもの死線を潜り抜けて来た跡が嫌でも感じ取れた。
『ジオラス、彼の
――固有の名を持つ武器・・・ということは
「――魔唄剣……?君は――」
魔唄剣の存在を知っているのは当然だが、戦わずして魔唄剣だと見分けるとは、やはり只者ではない。
「レン・ローナス」彼は名乗りながら右手を空けて差し出し、握手を求めた。
「ア――」
ジオラスが名乗り、手を出しかけた時、レンは注告する。
「俺の眼は、相手が行う
偽名を名乗ろうとしたジオラスは、即座に紅い瞳から目を逸らし、レンと名乗る少年が差し出した右手に視線を移す。
――嘘を見抜く?!――紅い瞳にはそんな能力が……マリアさんも……まさかあの時、僕は試されていたのだろうか。
本当はそんな能力はレンの瞳にはなかった。彼程の特殊な魔導力を持つ者に、こんなハッタリが通用しないとは思うが、出来るだけ正しい情報が欲しかったが為に普段は付かない子供じみた嘘を付いた。
「――そう、なんだ。僕の名は……ジオラス、よろしくね」
優しくレンの手を握り返す。
――そこまで鍛錬を積んだ様な手ではない……特殊な魔導力故に魔導術を主に使用する流派なのかもしれない。
レンはセダム・ドルファ教官長の言う切磋琢磨出来る相手を見つけたかもしれないと胸が高鳴り自然と口角が上がる。
「突然で申し訳ないが、リヤド騎士学院の修練場まで一緒に来てくれないか? ジオラス、君の力を是非見せて欲しいんだ」
「――僕の力?」
違う、あれはアルメニアの……
『丁度良いですね。』
――えっ?
『ジオラスは以前、私の強さに疑問を抱いていましたね?――
――証明って……何を?
ジオラスはいつもと雰囲気の違うアルメニアに気圧され、分かっていながらも恐る恐る質問した。
『フフッ、ジオラスが思っている以上に、私は戦えるという事をです』
目新しい物に一喜一憂し、子供の様な行動をするいつもの表情とは違い、そこに居たのは数多の戦場で、数多の強者を相手にしてきた。まさに剣士の顔付きだった。
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