第23話 もっと違う出会い方をしていたら
「俺の夢を手助け……って?」
私……黒川丹音の提案に、弟くんは疑問を呈した。
「弟くんの夢はプロゲーマーになることだよね」
「まあ、そうだね」
「プロになるためには当然、相応の実力が必要だと思うけど……他にも必要なものはあるよね。例えば、知名度とか」
「確かに、強くても目立たなければプロチームからスカウトされる可能性は低いのは間違いないけど……もしかして、俺の知名度を上げるために姉さんが何かしてくれるってこと?」
さすが弟くん、理解が早い。
「うん! 厳密には私が何かするっていうよりは、弟くんがすることのお手伝いだけどね」
「俺に、何をしろと」
「今度の大会で、弟くんがプレイしている様子を配信してみない?」
弟くんは今度、プレデターズというゲームの大会に出場する。
プロゲーマーを目指すための足掛かりとして、その大会で実績を残そうとしている。
だけど、仮に実績や実力があったとしても、それを評価する人間の目に留まらない限り、プロゲーマーにはなれない。
だからこそ私は、弟くんに積極的に表舞台に出ていくよう提案したのだ。
「配信か……」
「ニノンとして、弟くんの配信をウォッチパーティーもする手厚いサポートもするよ!」
ウォッチパーティーとは、他人の配信や映画なんかを、自分の配信の視聴者と一緒に見て盛り上がったり、感想をリアルタイムで共有するような配信形式だ。
ニノンが配信すれば同時接続の視聴者数は安定して四桁には届く。
ニノンのリスナーたちは皆、弟くんのことを知っていて好意的に見てくれている。
だからきっと、弟くんが大会で頑張っている様子をニノンの配信で映したら、みんな私と一緒に応援してくれるはず……!
……まあ、この計画がうまくいくかはあくまで弟くんの活躍次第だけどね!
お姉ちゃんとしてできるのは、弟くんがみんなの注目を浴びる機会を作ってあげる段階までだ。
大勢のニノンの視聴者の前で弟くんが大活躍したら、バズるきっかけになるはず……私の弟くんなんだから間違いない!
そう。
私の考えたもう一つの案とは、弟くんをニノンとして全力バックアップして甘やかしてた寄り切ってもらおうという作戦だ!
ちょっとずるいような気もするけど、VTuberのニノンとして持っている登録者や視聴者の数だって、私の持つ実績の一部だからねー。
「正直……姉さんにそういう提案をしてもらえるのはありがたい。やっぱり、強さだけじゃなくて知名度もあったら、プロゲーマーになる難易度も変わるだろうし」
しばらく考えていた弟くんは、そう言った。
私から提案したことではあるけど、弟くんって意外とシビアな考えを持ってるよね。
プロゲーマーになるって、割と夢物語みたいな目標に聞こえるけど……弟くんの場合はそのために必要なことを逆算して考えている気がする。
……って、大学を休学してVTuberなんて不安定な職業に就いている私が、弟くんの夢についてとやかく言える立場じゃないかー。
ともあれ、話が決まったならさっそく行動だ。
「じゃあ、まずは弟くんの配信環境を整えないとね! パソコンとかはあるから大体は問題ないと思うけど……足りない機材は私が前に使ってたやつをあげるよー」
「ありがとう。でも……姉さんは、どうしてそこまで色々と俺のことを手伝ってくれようとしてるんだ?」
弟くんから発せられた、素朴な疑問。
「それは……」
弟くんのことが、男の子として好きで……近くにいる口実が欲しいから。
なんて言葉を、正直に口にすることはできないので。
「……もちろん、私が弟くんのお姉ちゃんだからだよー」
この答えも、嘘じゃない。
だけど……私はつい、くだらないことを考えてしまう。
もし、仮に。
私と弟くんが、きょうだいとしてじゃなくて、もっと違う出会い方をしていたら。
私は、弟くんに素直に思いを伝えることができたのかな。
例えば、ニノンとそのファンの男の子として、とか。
(うーん……それはそれで、別の問題がありそうだ)
私は自分の考えに対して、やれやれとため息をついた。
◇◇◇◇◇
更新遅くなってすみません。
今後は少なくとも週一程度のペースでは更新できるようにしていきたいと思ってます!
親が再婚して推しのVTuberが姉になった〜きょうだいなら一緒に遊びに行ったり配信に出てもセーフらしいけど、姉の距離感が妙に近すぎて困る〜 りんどー @rindo2go
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