その14 崩壊

 追い詰められたズィアークはすがるように

魔王の石像へ祈りを捧げる。


 しかしその瞬間、地響きと共に石像は壊れ

その巨大な胸部の下敷きとなってしまった。


 腹に響くような音が止んだものの、

その場の誰もが半壊した石像と瓦礫の山に視線を注ぐ。



「ズ、ズィアーク様・・・?」


「ズィアーク、様・・・。」



 しばらくして口々に老人の名前を呼ぶが、

返事は一切聞こえてこない。


 そして誰とはなしにこんなことを言い始めた。



「ま・・・、魔王様がお怒りになられたんだ!

ここにいたら私たちも危ない!」


「魔王様の怒りだって!? そんな馬鹿な!

なぜ復活の儀式を遂行していた我らが・・・!?」


「じゃあアレはどう説明するんだ!!

俺たちのしてきたことは間違ってたんじゃないのか!?」


「そんな・・・、俺たちの悲願は、俺たちはどうなるっていうんだ!?」


「に・・・、逃げろーっ!!」

 


 誰かの叫び声を皮切りに、

ローブの人間たちは一目散に魔王の石像から離れ

地上へと駆けていく。


 何人かは気絶したカイルを背負い、

とにかくその場から去っていった。


 その様子を呆然と見ていたレナードたちだが、

正気に戻ったルビーが慌てて叫ぶ。



「ちょっと待ちなさい! この檻からみんなを出しなさいよ!

せめて鍵とか置いてけー!」



 無論、誰一人としてその声には耳を傾けず、

あっという間に人の姿が見えなくなっていく。


 とにかく誰かを捕まえようと

ルビーが駆け出そうとした直後、

ドロシーが不意に声を上げた。



「ちょ、ちょっと待ってくれ、これっ!

これ、鍵束があったぞ!?」


「えっ!? うそっ!? 本当に!

ナイスよドロシー、どこにあったの!?」


「あの玉座の側に落ちていたんだ。

ごたごたに紛れて誰か落としたのかもしれないな、

とにかく鍵が合うか試してみよう!」



 偶然落ちていたらしい鍵を拾い、

ドロシーたちはマイナたちの檻へ急ぐ。


 そして鍵束についてる鍵を順番に試していくと、

ほどなくして鍵の開く音が聞こえた。



「やった、開いたわっ!

ユカ、ミカ、チカ、よくがんばったわねっ!」


「「「お姉ちゃーん!!!」」」



 無事に扉が開き、捕らえられていた四人が解放される。


 三姉妹とルビーは涙を流しながら抱き合い、

そしてマイナも恐る恐る檻から出てきた。



「みんなありがとう・・・。

私たちのためにいっぱい危険な目に合わせてしまって・・・。」


「無事でなによりだ。 それに気に病む必要はない。

悪いのはこんなバカげたことをしたあいつらなんだから。」


「そうですよマイナさん、みんな無事で本当に良かった・・・。」


「レナード君、ドロシー・・・、ルビーも、

みんなありがとう・・・。」



 助け出されたマイナも涙ぐみながら

感謝の言葉を口にする。


 しかし再会の感動に浸っている時間はそれほど長くなく、

レナードが不意に膝をついた。



「あっ!? レナード君、大丈夫!?」


「ごめんなさい・・・、ちょっと無理をしすぎたみたいです・・・。

あとはお願いします・・・。」



 それだけ言うと、レナードはそのままゆっくりと床に倒れ込んでしまう。


 マイナが慌てて駆け寄って抱きかかえるが、

いくら呼びかけてもレナードは返事をしない。



「レナード君!? しっかりして!」


「ま、待て待て、落ち着くんだ。

どうやら気絶してしまったみたいだよ。

祝福の力もかなり使ってたみたいだから無理もない。」


「早く休ませてあげないと! すぐに戻りましょう!」


「お、落ち着いておくれ・・・。

ここはダンジョンの中なんだ、このまま外に出たら

モンスターの餌食になってしまう。 何かいい方法は・・・。」



 動揺するマイナをなだめつつ、

この場からどうやって戻るかという目の前の大きな問題について

思考を巡らせるドロシー。


 そこへ、騒ぎに気付いたルビーが

三姉妹と一緒にマイナたちの側へ来る。



「どうしたの・・・、レナード、大丈夫!?

・・・気絶してるだけか。」


「祝福の力をそれなりの時間使ってたみたいだからね・・・。

とりあえずここからどうやって地上へ戻ろう?」


「そうなのよねぇ。 レナードは私が背負えばいいけど

またあのモンスターの群れを捌きながらっていうのは・・・。」


「・・・そうだ! 私たちを捕まえた連中が、

自分たちと一緒ならモンスターに襲われないって言ってたの。

もしかしたら何かあるんじゃ・・・!」


「確かに、この場所にモンスターが入ってこないということは

近寄らせない何かがどこかにあるかもしれない、探してみよう!」



 地上へ戻るための可能性を探すべく、

それぞれが別れてあちこちの部屋を捜索する。


 そして気を失ったレナードが一人残された部屋に、

ローブを身に着けた人間がいつの間にか立っていた。



「レニー君、大きくなったね・・・。

それと、お疲れ様・・・。」


「話したいことはいっぱいあるんだけど、

そんなに時間がないのが残念よ。」


「・・・どうか無事でいてね。

きっといつか会えるその時まで・・・。」



 ローブの女性はフードを取ると、

長い黒髪を振りながら整える。


 そして床に寝そべるレナードに顔を近づけると

頬に優しく口付けを施した。


 女性はすぐにフードを被りその場を後にする。



「んん・・・、おねえ、ちゃ・・・。」



 頬に触れた感触と、残されたキスマークに気付くことなく

レナードは眠り続けた・・・。



※お知らせ※


 いつも小説をご覧いただきありがとうございます。

まことに申し訳ございませんが、中途半端なところではあるものの

ここで一旦更新をストップさせていただきます。

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~おっぱいが恐れられる世界で~ 少年はおっぱい集めて旅します ゴリ夢中 @dkiE3t9M

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