その13 決着

 ズィアークの側近である強敵カイルを

辛くも退けることのできたレナードたち。


 マイナたちを解放するように求めるものの、

ズィアークは怒りの形相をカイルに向けていた。



「何をしている・・・!? カイルよ、早く起きろ!

こやつらをとっとと処理するのだ!

なぜ私の命令が聞けん!!」


「・・・早くマイナさんたちを解放してください。

これ以上拒むようなら・・・。」



 まるで話を聞いていないズィアークに対し、

レナードが要求を重ねる。


 しかし、ズィアークはそれでもレナードの方すら見ることなく、

いきなり玉座から立ち上がってカイルの方へ歩いて行った。



「貴様、なぜ私の言うことを聞かんのだ!

魔王様復活の悲願がもうすぐ果たされるというのに

なぜお前がそれを妨げている!」



 ますます語気を荒げながら

気絶したカイルに詰め寄る様子に、

レナードとドロシーは困惑してしまう。


 その声は部屋中に響いており、

ルビーを捕えようとしていた人間たちもそちらへ目を向けていた。


 さらには胸倉をつかんで揺り起こそうとするズィアークの行動に、

何人かの人間が反応する。



「ズィアーク様、や、やめてください、

それ以上やったらカイルさんが・・・!」


「起きろカイル! 私の命令を実行しろ!

魔王様を復活させるための儀式を遂行するのだ!」

 

「ズィアーク様、もうやめましょう!

俺たちの負けですよ!」



 何人かが慌てて駆け寄るものの、

ズィアークは誰の言葉にも耳を貸そうとしない。


 見るに見かねた一人が後ろから羽交い絞めにし、

落ち着かせようとなだめてみる。



「ズィアーク様、落ち着いてください!

カイルさんがやられてしまったんです、

このままではズィアーク様も・・・!」


「ええい放せっ! この役立たずどもめっ!

もういいっ! こうなれば今すぐに儀式を始めてやる!」



 進言も一切聞かず、ズィアークは自分を抑えようとする人間を振りほどくと

魔王像の元へ駆け寄る。


 そして地に額を擦り付けるほどに頭を下げ、

大きな声で祈りを捧げ始めた。



「おお、我らが魔王様!

あなた様の器となりうる人間をここに揃えました!

どうか今度こそ私の前に姿を現しくださいませ!」



 建物よりもはるかに大きく、

だが今にも壊れそうなほどぼろぼろな石像の前で

何度も何度も頭を下げるズィアーク。


 その様子は誰の目にも、

今まで同じような場面を見てきたローブの人間たちにすら

哀れな姿に写っていた。


 しかし祈りが通じたのか定かでないが、

急に部屋全体が揺れ、地響きのような音が聞こえてくる。



「おお!! これぞまさしく魔王様復活の予兆!

さあ、今こそ姿を現してください魔王様っ!

ははは・・・! あーっはっはっはっは!」



 全てを自分に都合のいいように受け取り、

歓喜の声を上げるズィアーク。


 しかし彼以外は、

現状が極めて危険なことを理解していた。


 石像から砂煙が巻き起こり、

細かい破片があちこちへ降り注いでいたのだ。



「ズィアーク様、そこを離れてください!

危険です! 像が崩れてしまいます!」


「魔王様っ! 魔王様っ!

ああ、今こそ私の悲願がここにっ!」



 いよいよ崩れ始めた像に、

ズィアークが至福の表情で近寄っていく。


 次の瞬間、石像の胸部に大きな亀裂が走り、

そして大きな音を立てながら崩れ落ちる。


 巨大すぎるおっぱいは、

足元まで近寄っていたズィアークに降り注ぎ

彼を完全に埋めつくしてしまう。


 その直後に石像の崩壊は収まり、

地面に響く音も、ズィアークの甲高い声も

一切聞こえなくなっていた・・・。


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