閑話 とある少年の想い
「アヌベス」
気配無く俺の隣に現れた白髪の少女に声をかける。
「あいつ、嫌い」
「無知なだけさ」
「魔王さま、悪く言う。ので、ミシュナ嫌い」
祖国の王を悪王と混同されたのが相当気に障ったようだ。
「お前も随分と感情豊かになってきたじゃないか」
俺は笑うも、彼女は不満げに鼻を鳴らす。
「コトリノ王。と、アルエット」
「……ああ」
「聞かない、何故」
「……今回見た資料にコトリノ王とアルエットの名は無かった。原罪の……母を追えば奴の名に行き着く。
機を待つしかない」
「理解。魔王さまのため。頑張る」
「ああ、頼む」
俺は彼女の頭を撫でると、そっとその場を離れた。
原罪のシルヴィアの血を継いだ俺には、ハンク家の呪いが掛かっているはずだ。
ーー短命。
30まで生きられれば運がいい。それまでは……。
血を求めてはいけない。
殺戮衝動に身をゆだねない。
狂気に身を浸す感覚に気をつけろ。
奴らを討つには、『老人』となった俺には骨が折れるだろうが。それでも、俺は奴らの息の根を止める。
それが俺の贖いだから。
優しい貴女を踏みにじり、最悪の死を与えたあいつらへ報いることが、俺自身の為すべきことなのだから。
魔法探検俱楽部と魔女狩り騎士 ユールヒェン・グラ @yuribeeim
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