25 鳳凰暦2020年5月13日 水曜日7校時 国立ヨモツ大学附属高等学校1年1組
今日のLHRでは、ギルド出張所から職員の方が、説明にやってきた。あたし――設楽真鈴は司会進行を担当している学級代表の平坂さんの方を見たけど、どう見ても困惑してる。やっぱりこれは普通じゃないよね……。
「……契約予定者24人全員の保護者承諾書が届きましたので、これは正式な契約となります。また、今回、ギルドクエストという形になったのは、鈴木くんのこの収入が魔石等の納品・換金と同じく、附属高の成績に関わる成果となるからです」
……本当に鈴木くんは、徹底していると思う。最初はあれだけ鈴木くんを煽ってた上島くんとか、今はもう顔面蒼白だ。
「支払報酬に関する規定はご覧の通り、6/8(月)~6/12(金)までの、武闘会の予選が行われる週の前の週の平日5日間、16時10分以降のダンジョンアタックによる収入の合計を日数で割って平均したものを1日分として、鈴木くんが予選に参加した日数分、その2倍の金額を支払って頂きます。ただし、おそらく、皆様にとっても予定外の出費でもありますので、月末支払については支払報酬の総額の1%とし、残りは卒業後、卒業までに稼いで支払う、という形になっています。あと、鈴木くんの納品・換金の成績に関してはその総額の方で判定されます」
「おお、鈴木、やっぱ親切じゃねーか」
「イチパーとか、楽勝だな。ゴブイチくらいじゃん?」
「いや、それ以下だろ、それ以下」
ギルドの職員さんが言った「1%」という一言で、たったそれだけのことで、顔面蒼白だった人たちに顔色が戻ってきた。え? 安心していいの、これ?
「なお、その5日間の鈴木くんのダンジョンアタックによる収入につきましては、ギルドの方で不正監視の立会人を設定して、監視を行うことも契約しております。支払報酬の金額に不正や誤りがないことはギルドが責任を持って保証致します」
「完璧じゃねーか!」
「いや、すげぇよ、鈴木!」
嬉しそうに叫ぶみんなと違って、あたしはぶるっと背筋が寒くなった。
……鈴木くんがここまで徹底してる? うん。これ、徹底し過ぎてる。これはつまり、鈴木くんの収入が、クラスのみんなが信用しないレベルの大きな金額になるって、鈴木くん本人は考えてるってことだよね⁉ あたしのカンがそう言ってるし⁉
え? そんなの、ここのみんな、退学になっちゃうんじゃ……あ、だから、月末支払は、たった1%になってるんじゃないかな……99%は卒業後に。つまり、卒業まで、鈴木くんに支払うお金を一生懸命に貯めないといけないレベルで……。うわぁ~~~……。
「では、以上で、ギルドからの説明は終わります。冴羽先生、お時間を取らせて申し訳ありません。失礼しますね」
「お、おぅ。すまんな」
「……坊主頭、似合いませんね」
「うるせぇ、用が済んだらもう行け、シっ、シっ」
冴羽先生がギルドの職員さんを犬のように追い払う。知り合いかな?
職員さんは鈴木くんとアイコンタクトをして、教室を出て行った。
「センセー、なんか親し気でしたねー? 実は隠れ彼女とか?」
外村さんが冴羽先生をからかう。
「違う! あれはこの3月に卒業したおまえらの先輩だ! しかも元生徒会副会長だ! それで知り合いなだけ! おまえらもいつか将来について考える時、ギルドへの就職って道があるって知っとけよ! 生徒会役員とかだとそっち方面は優遇されるからな!」
冴羽先生がそう説明した。なるほど、あの人って、先輩なのか。あたしはそう思ったけど、他の女子たちは「実は彼女」説で盛り上がっていた。
そんな中、鈴木くんは平坂さんに声をかける。
「平坂さん。これで契約が完了したから、僕は武闘会の予選に出る。申し込み、お願い」
「契約が完了……あ、はい。わかりま……わかったよ、鈴木くん。申し込んどくね」
その会話にも、あたしはちょっとだけ、何かが引っ掛かった。でも、それが何なのか、その瞬間は気づかなかったのだった。
上島くんとかの、鈴木くんにお金絡みで関わった人たちの運命とか、そんなことより、あたしにとっては重要なことがあったから。
だって今日はテストの前日! それは、鈴木くんの予想問題の発売日なのだ! 今日、予想問題を手に入れて徹夜で頑張らないと!
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