　今日は外泊許可で岡山さんがいないから、あたし――高千穂美舞の部屋に、みんなは一度、集まった。

　岡山さんから指示され、頼まれた予想問題を配り終え、明日は市立図書館で気分転換も含めて試験対策は行うという鈴木くんからの連絡も済ませた。

　学校の図書館よりは、ウザい絡みも減って気が楽になるだろう。

「……それで、気になることは？　ウチのクラスだと、岡山さんと酒田さんが武闘会の代表になったことくらいだけど」

「あらま、何それ。でも、それは、かなり大きな話かも。３組はもう、ダン禁処分を受けた大津の権力が弱まってて、誰も言うこと聞かないし、結局、大津たち三馬鹿が武闘会に出るって。やられ役はおまえらがやっとけ、みたいなこと、推薦の男子に言われてた」

「……みんな歪んでるなぁ。それよりも、あたしは、今日の放課後、鈴木くんが少し浮かれ気味だったように思った。ね、あみちゃん、そう思わなかったかな？」

「確かに、そうだったかもね。エミちゃん、１組で何か、あった？」

「……あった。鈴木、最高」

　そう言って、満面の笑顔になった矢崎さんがそこにいた。

　あたしたちは、話すのは苦手な矢崎さんが、それでも楽しそうに一生懸命ぽつりぽつりと語る１組での鈴木くんの様子に、自分の耳を疑った。

　……鈴木くんを武闘会のクラス代表にって話は、わからなくもないけど、鈴木くんがそれを一度は拒絶して、お金がもらえるとなったら掌を返して……って、あれ？　鈴木くんだったら、１週間の、平日で、いくら稼げる？

　小鬼ダンを放課後だけで５周は回れる気が……１周でいくらだった？

　ゴブ２２、ゴメイ２６、ソード１８のアーチ９、ボス１で……２万５千円はあって、鈴木くんはよくバスタードソードとかドロップさせてるし、あれも含めたら……１日１５万は超える気がする。

　予選は５日間だけど鈴木くんなら３日間で突破するだろうし、４５万円？　それを２０人ぐらいで分担するなら、２万円くらい。それくらいなら、そう問題にはならないのかな？

　とりあえず、あたしたちが心配していた鈴木くんに対する男子たちの嫌がらせについては、鈴木くんは特に気にせず、それどころか、自分の収入に変えてしまいそうなので、一件落着だとわかった。

「ホント、鈴木、最高」

　最後まで、矢崎さんは笑顔だった。

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