9 鳳凰暦2020年5月8日 金曜日放課後 国立ヨモツ大学附属高等学校・中学校内ダンジョンアタッカーズギルド出張所


 テスト週間になってのんびりできる、交代で有給を使う、そういう状態にもかかわらず、すごく申し訳なさそうな顔をした新人の釘崎ひかりさんが私――宝蔵院麗子のところへやってきた。


「……何、その顔。嫌な予感しかしない」

「顔で判断しないでもらえます? あのですね、先輩。さっき、鈴木くんが来てたんですけど」

「嫌な予感がその名前でもう確信に変わったわね……」

「そこまで? え、いえ。それで、スキル講習の申し込みのついで、というか、どちらかというとスキル講習の方がついでというか、そういう感じで、ギルドクエストの依頼方法とか、依頼者の年齢制限とか、ギルドクエストの報酬支払と魔法契約についてとか、ギルドによるダンジョンアタックの不正監視依頼とか、いろいろと質問した上で、必要な書類をがっさりと持って帰りました」

「……意味が、わからない」

「あ、それ、あたしも思いましたよ、同じこと。いっそ、職員必携のギルド関連法規集とか貸そうかと思いましたもん……」


 アレなら、何をしても不思議ではない。

 それにしても、ギルドクエストの依頼? 年齢制限ってことは、自分が依頼するつもりかしら? だとしたらとんでもない依頼になりそう。神殿ダンジョンのアタックサポートとか? いえ、そういうのは3年になれば、インターンで……でも、最近はクランでのキャリーも犬ダンクリアぐらいって話も聞いたわね。

 それに不正監視依頼……結び付かないわ。何を監視させるつもりなの?

 ただ、ろくでもない内容であることは間違いない。


 ……とにかく、私がアレに巻き込まれないように、どうすべきか、それだけは考えといた方がいいかもしれない。


 とりあえず、新人に経験を積ませるという形で、釘崎さんにアレは任せよう、私はそう決断した。私はアレに近づかない。アレへの対応は普通の附属生では経験できないことがたくさんあるのだから、新人教育にはきっと適切な人材だろう。


 それにしても、今度はアレ絡みでいったい何が起こってるのかしらね……?





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