第5回 デスゲームから生還したイケメンがよりによって主催者に狂ってて愉快だったのでインタビューをするのが好きなだけです

──センジュさん。


センジュ:(無言)


──センジュさん。お気持ちはわかりますが、インタビューしてくださいと言ったのは貴方ですよね。第5回目のデスゲームからの生還……ご愁傷様です。


センジュ:(鼻をすする)


──進めますね、前回の反響から。

「お前の両親超有名じゃねぇか」

「お前の両親世界の億万長者ランキングに入ってるじゃねぇか」

「お前の両親SNSでこの記事宣伝してるじゃねぇか、いい加減にしろ」


センジュ:(ティッシュで鼻をかむ)


──お便りいきますが。


センジュ:……ぐす。


──お答えできますか?


センジュ:……やります。


──……『コウデンデス』さんから。

「センジュさん、こんにちは。第5回目のデスゲーム見ました。その、多分こんなこと言っても全然気休めにもならないと思うんですけど、元気出してください!楽しいこと考えましょ!ということで、今後別のデスゲームに参加する予定はありますか?」


センジュ:ないです。コスゲたんが主催じゃないデスゲームには参加しません。……気遣ってもらってありがとうございます。


──今回のデスゲームは豪華客船で参加者に括り付けられた爆弾解除ゲームでしたね。センジュさんは見事最後の生き残りとなったわけですが──


センジュ:コスゲたんは……豪華客船と共に海の藻屑に……


──まさかセンジュさんとコスゲが2人きりになった瞬間、船にイージス艦が衝突して爆発するとは。


センジュ:初めて直接会えたのに!直接、愛を、伝えられる機会だったのに……!


──本当にご愁傷様です。このインタビューも最終回ですね。


センジュ:最終回にしないでください!まだ、まだ僕は諦めてませんから!


──……そうですね。はい、次のお便りです。『匿名希望』さんから。

「センジュさん、捜査協力ありがとうございます!ミンクチアダの元締めを現行犯逮捕出来ました!流石探偵『トリプルS』です!今後ともご協力よろしくお願いします!」


センジュ:よかったですね。


──投げやりにならないでください。というか謎の国際探偵、数々の難事件をSecretにSolutionするSpyの正体ってセンジュさんだったんですね。


センジュ:どうでしょうね。


──拗ねないでくださいよ。…… 次のお便りです。……コスゲタンさんからのお便りです。

「センジュさんこんにちは。ワタシはコスゲではありませんが、告白したいことがあります。

コスゲはセンジュさんのことが好きです。コスゲのことだけをひたむきに想いながらデスゲームを勝ち抜く貴方が、この記事でコスゲに変わらない愛を語り続ける貴方が、ずっと眩しかった。その熱意に目を焼かれて、離せなくなってしまった。コスゲは、貴方のその真摯な気持ちに答えたいと思っています。このお便りが読まれている頃にはコスゲはもういないでしょうが、今この場にコスゲがいると仮定して、というかワタシがコスゲであると仮定して、告白の返事を聞かせていただけませんか?」


センジュ:……。


──最後ですから、センジュさん。


センジュ:いやコスゲタンさんはコスゲたんじゃないでしょ。コスゲたんが僕を好きとか、憶測はよくないです。


──嘘だろまたこのパターンかよ。


センジュ:第一、仮に両想いだったとしてですよ?記事越しに真剣な告白の返事をするとか、失礼じゃないですか。


──ド正論を行ってくれますね。それはそうかも、ですが。


センジュ:僕はコスゲたんが死んだなんて認めません。諦めません。とはいえ、コスゲタンさんのお便りにお答えはします。この、コスゲたんに会えたら伝えようとしていた言葉を一部抜粋しますね。


──原稿用紙が1枚2枚……何枚あるんですかこれ。


センジュ:……よし、ひとまずこれで。コスゲたん僕は君を愛している。君は僕の心の灯火だ。君のデスゲームに参加すること、そして君の姿を見ることが、僕にとって生きる意味になっている。君の存在なしでは、僕はもう生きていけないんだ。


──その手の短刀どこから出したんですか?回収しますよ、離してうわ力強


センジュ:今回のデスゲームでも、君の計画とその見事な手腕に改めて惚れ直した。腕時計型の爆弾や、殺人バクテリアの脅威、そして最後、ヴィーナス号にイージス艦が衝突して大爆発するという壮大なシナリオ……すべてが素晴らしい才能の表れだった。


──コスゲ迷走していたんでしょうか。元ネタが大渋滞してますね。購買者の皆さんは劇場版名探偵コ◯ンをお調べくださいね。


センジュ:コスゲたん、君がどれほど素晴らしいか、どれほど僕が君を愛しているか、言葉だけでは伝えきれない。でも、これだけは確かだ。君と一緒にいるために、どんな困難でも乗り越える。君の側で、君の喜びの為に、君のデスゲームに全力で参加し続ける!例えどれだけ危険でも!


──歴代で危険になった例だと、とりあえず新しい施設作って、セレモニーとかで人を集めて、なんやかんやあって吹っ飛ばすとかになりますかねぇ。


センジュ:コスゲたん。どうか僕のこの気持ちを受け取ってください。そして、これからも一緒にデスゲームを続けていけることを願っています。


──海の藻屑になってくれて良かった。こんなの聞かれたらまた新たなデスゲームが始まってしまうところだった。


センジュ:……


──……ん、センジュさん?どうしましたか?


センジュ:ミズモトさん?嫉妬は見苦しいですよ。いくらミズモトさんが僕のことが好きだからって。まあ僕もミズモトさんのことは嫌いじゃないですけど。


──……は?……何故そう考えたんでしょうか。


センジュ:え?だって、僕のこと好きじゃなきゃ5回も根気よくインタビューに付き合ってくれませんよね?


──仕事だからなのですが。仕事じゃなきゃ付き合いませんが。


センジュ:またまた〜恥ずかしがらなくていいですよ?このトリプルSの目は誤魔化せません。


──……頭が痛い。いや……。


センジュ:あとほら、インタビュー中はミズモトさん仕事だからツンケンしてるけど。インタビュー前の打ち合わせの時とか、インタビュー終わりに一緒に食事行く時とか、もっと柔らかくて可愛いじゃないですか。


──かっ……センジュさんってコスゲ以外にもそういうこと遠慮なく言いますよね。


センジュ:それに皆さんは知らないでしょうけど、ミズモトさんはおウチのPCに僕の写真貼ってるんですよ。こんなんもう好きじゃないですか!


──(無言で頭を抑える記者)…………全部言ってくれましたねこのヤロウ。何を言ってももう無駄でしょうから一つだけハッキリさせておきますよ。私の好きはセンジュさんの考えている好きとは違いますから。そこは誤解しないでください。


センジュ:ほんとですか〜?


──元気が出たようなら何よりです。ではこれで(バイブ音)……お互い携帯に大量の通知が届いていますね。なんでしょうか?


センジュ:(携帯を確認する)──こっこれは!?


──『死遊戯コスゲ 生デスゲーム!泥棒猫は許さない♡ 復活のコスゲたん〜期待していてマイダーリン〜』という名のアカウントがつい5秒前から配信を始めたと……ニュースになっていますね


センジュ:なんだ死遊戯コスゲか。


──コスゲですよ。


センジュ:コスゲ。死遊戯コスゲ、えーと。死遊戯コスゲはコスゲたんなんだっけ。……コスゲたん!!!???


──コスゲですよ。


センジュ:……やっぱり、やっぱり!コスゲたんは……生きていたんだ!コスゲたん……!


──まあ、コスゲタンのお便りが第5回目のデスゲームの後に送られてきたので生存は確定してたんですけどね。


センジュ:コスゲたんが生きている……!うわぁぁぁぁん……!


──(ティッシュを渡す記者)で、参加するんですよね?いつも通り。


センジュ:ぐすっ。もちろんです!うおおー!投げ銭の時間だぁぁー!!!


──というわけで、取材中に第6回目のデスゲームが始まってしまいました。第5回目のインタビューはここまでのようです。

 ……全く、本当に愉快な人。この職は趣味の延長だったのですが、今心から記者を続けてきて良かったと感じています。

 ここまでご拝読いただいた皆様、私の仕事にお付き合いいただきありがとうございます。

 次回の『デスゲームから生還したイケメンがよりによって主催者に狂ってて愉快だったのでインタビューしてみた件』をどうか、お楽しみに。

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デスゲームから生還したイケメンがよりによって主催者に狂ってて愉快だったのでインタビューしてみた件 何屋間屋 @nann_ya_kann_ya

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