ホームシック


──寂しい。


 思うように動けなかった術後3日間をクリアし、管も全部取れて、余裕しゃくしゃくな日々を過ごしていた。相変わらず歩くのは遅いし、お腹が物理的に(笑)割れているので、絶望的に体力が削られているけれど。動画も見る元気もあるし本も読み放題。やることも特に無いから昼寝も堂々とできる。


 しかし、コロナ対策で面会が一切禁止だったので、家族とはメッセージアプリでの連絡しか出来なかった。電話も専用の部屋でできるみたいだったが、私のヨボヨボ歩きでは行くのが億劫でやめた。


 ある日の夕食の時間に、一枚の写真が送られて来た。久しく座っていないダイニングテーブルに、私を抜いた家族3人分のシチュー。きっとこれからみんなでわいわい食べるんだろうな。

 対する私のご飯は美味しい鶏の変り揚げだけど、ルームメイトはいるといえ、カーテンで仕切られている中ひとりぼっち。



 ここに来て初めて、ホームシックになったと自覚した。

──さみしい、寂しすぎる。

 とりあえずメッセージ上でも会話をして気を紛らわそうとするが、こういう時に限って相手はケータイを見ていない。

 こりゃまずいぞ、と思ったが最後、涙も鼻水も止まらない。あっという間にゴミ箱がいっぱいになってしまって、使い終えたティッシュが机に山積みになる始末。


 そろそろティッシュの山を片付けないとなぁ、流石に高校生にもなって泣いている現場を見られるのはちょっと……と思っていたタイミングで、夕方の担当看護師さんが登場。

「どうしたの〜⁉︎」

ばっちり泣いているところを目撃されました。


 目をまんまるにして驚く看護師さん。そりゃそうだよな、血圧測ろうと思ってカーテンを開けたらティッシュの山と泣いてる高校生がいるんだもの。

 他のお仕事もたくさんあるだろうに、落ち着くまで一緒にいてくれた看護師さんには感謝しかない。

「大丈夫?眠れそう?」

 背中をぽんぽんしてもらってすっかり落ち着いた私。今思えば赤ちゃんがえりもいいところだけど、当時は寂しさでどうしようもなかった。


──よし、後少しだと思って頑張るぞー!

 なんとか気合いを入れて、その日は早々に眠ってしまった。



 そして次の日の午後。まさかの思わぬ朗報が舞い込むことになる。



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