やっとのご飯とおじいちゃん
術後2日目の朝ごはんメニューは、おかゆと……あと何かおかずがあった。術前はご飯の写真をとって家族に送りつけていたけれど、傷が痛すぎてまず無理。車椅子に10分も座ってられないし、立つのも一苦労。
気合いを入れていた割に箸が進まず、1割食べたか食べないかだった。おかゆはなんと全部で300g。2日目は朝昼晩、全粥だったけれど食べきれなかった。
日中は基本的に寝て、回診の時に少し起きる。はっきりいってすごく暇だ。かといって自由には動けない。
でも、1日目とは違って、とりあえず水は誰かに頼まずとも取れるようになっていた。少しは進歩してるみたい。
3日目。車椅子にちょっと長く座っていられた。今日もお粥だけど、昨日よりは食べられたと思う。昨日よりも断然気分がいい。朝早く、看護師さんが院内を車椅子でお散歩してくれた。
──ここで、事件は起こる。廊下をお散歩している最中に、看護師さんがびっくりしていった。
「ちょっと!何勝手に出歩いてるんですか!」
目線の先にいたのはおじいちゃん。病院の寝巻きを着て、自分の病室から外に出ようとしている。
「酸素缶は?」
「外した」
「ダメでしょう、勝手に外しちゃ!御手洗いは看護師と一緒にって約束でしたよね?」
「呼んだけど全然来ねえんだもん」
「それはね、いろんな患者さんいますから待っててくださいって」
「来ねえほうがいけないんだろう」
看護師さんは、ちょっとだけ待っててね、と私の車椅子を窓際に止めると、おじいちゃんの方に行ってしまった。
「こっちは患者なんだよ!」
「じゃあ看護師を増やしてくださいってアンケートに書いてください!」
こういう患者さんも対応している看護師さんは本当に凄いし、強い。私じゃ絶対できないことだ。看護師さんにも、看護師さんを目指すひとにも、優しい環境があればいいのに。窓から眺める朝日が眩しかった。
術後4日目。昨日より歩ける。車椅子ももういらない。
なんてったって、もうベットに腰掛けられるようになっているから!日に日に回復していく自分が嬉しくてたまらない。若者の回復力ってすごいなあと実感した。
しかも、今日からはお粥じゃなくて普通のご飯を食べていいみたい。嬉しくて朝昼晩ぜーんぶ完食。しかも、明日からはAとBの2種類からメニューが選べるとのこと。明日の朝はパンにしてみようかな?
ああ、早く元気になって家のご飯が食べたいな。
動けるようになってから管も結構取れて、あと背中の麻酔だけ取れば完璧に自由の身になる。日中も起きていられるようになったので、動画を見たり、本を読んだり。
元気になってからは、割と入院生活を楽しんでいた……はずだった。
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