ドラマみたいな展開
──今日来れますかね?あ、午後3時以降ならいつでも大丈夫なので。
おかぴ先生から電話があった。たぶん朝の8時過ぎくらいだったと思う。私は昨日の採血と検査漬けで疲れてフラフラで、学校を休んでいた。
午前中はしっかり休み、昼ご飯を食べてしばらくしてから出発。嫌な予感しかしない。相変わらず雨で、病院内は昨日ほどではないが混んでいた。
そして、話は冒頭の台詞に戻る。
「17歳の女の子にこんなこと言うのは酷なんだけど……手術しないとまずいです。昨日の検査で中身が水みたいになっていることがわかりました。このままだと破裂しますね」
──なんだって?私が、手術?
もう脳内がパニック状態。
「あ、私今ドラマみたいな台詞言われた〜」「破裂ってなんだ、お腹に水風船でも入ってるのかな?」など幼稚園児みたいなことを考えて知能レベルを下げないと受け止めきれない。はっきり言ってショックだった。
おかぴ先生によると、私の腫瘍が悪性か良性かはまだわからないらしい。でも、良性でも4cmを超えると切除の対象になるとのこと。
──左腎臓全摘。
部分切除ができないくらい腫瘍は大きくなっていた。
入院して手術して、退院するまで2週間くらいはかかるみたいだけど、背に腹はかえられない。手術を受けることに決めた。
「11月中旬にキャンセルが出たので、そこにしましょうか」
おかぴ先生がカレンダーで示した日付はこの日から10日後。いや、いくらなんでも早すぎでしょ!この日程だと確実に部活に出られないし、最後の定期演奏会にも参加できない──無理だ。
「12月くらいは空きがない……ですよね?」
「年内は全部埋まってますね。次に空いてるのは年明けです」
しばらく悩んでいると、おかぴ先生から鋭い一言。
「たぶん年明けまで待つと破裂しますよ。腎臓は重要な血管がたくさん集まってる部位なので、破裂したら相当危なくなるかと」
顔を見合わせる私と母。
「じゃあ年内でお願いします!」
この日、おかぴ先生の机にはザバスと共に綾鷹が新入りとして加わっていたのだが、気持ちが沈みすぎてそれどころではなかった。
入院のための検査があるから後日また来ないといけないと思うと気が重い。
診察室から出て、待合室に戻ると、造影剤CTの時に涙を拭いてくれた看護師さんに声をかけられた。今日の診察の時もおかぴ先生の後ろに控えていた方だ。
「ちょっとお話しませんか?」
この時名前も聞いたけど気が動転しすぎて覚えていないので、“Aちゃんさん”としておこう。
Aちゃんさんに、提出する同意書やこれからやる検査、手術の方法などについて軽くおさらいしてもらった。
母が父に入院することになったと連絡してる間に、Aちゃんさんと雑談もした。部活は何をやっているか聞かれて答えると、
「今と同じくらい声は出せなくなるかもね。お腹の手術だから」
と残念そうに言われて、すごく悲しくなったのを覚えている。
後日、生まれて初めてのPCRとエコー、採血(今度は低血圧にならなかった!)、心肺機能の検査などを受けた。入退院センターというところで手続きもしたし、入院前相談も受けた。先生や友達、後輩にもお話をしなければいけなかった。特に部活については、入院期間に練習に出られないのがつらかった。
とにかく時間が進むのが早くて、1日いちにちが飛ぶようにすぎていった。
そして、手術前日はやってくる。
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