トラウマと不穏な空気

 CT室に入ると、もじゃもじゃした頭のお兄さん──放射線技師さんが説明をしてくれた。ちょっと米津玄師さんに似ているような似てないような。


 さっきの点滴で留置されたままの針に、造影剤の入ったパックみたいなものをつけてもらった。ばんざいのポーズしてとるからね〜と言われて、看護師さんに血圧の最終チェックをしてもらう。

──よし!頑張るぞ!!!

と意気込んだものの。


「あれれ〜、血圧また低くなっちゃったね??」

血圧が安定していないと、造影剤は打てないらしい。

まじか⁈早く終わりたいのに!なんだか言うことを聞いてくれない自分の体に腹が立ってきた。

「緊張してるのかな?大丈夫だよ〜」

こんな時でも看護師のお姉さんは優しい。

「安定したらCTやろう、ゆっくりでいいからね〜」

放射線技師のお兄さんも優しすぎる。

お姉さんたちに背中をさすってもらい、なんとか血圧が正常に戻った。


「じゃあ、造影剤入れるとき声かけるね。体が痺れたり、なんかおかしいと思ったらすぐに言ってください」


万歳のポーズのまま、右の手に鋭い痛みと、体内に何かが入ってくる感覚。思わず、

「イチャイ……」

ここでもカオナシのようなか細い声が出てしまう。

『息を吸って、吐いて、止めてください』というコールを2回耐えて、無事にCTは終わった。


「よーく頑張ったねぇええ!!!」

看護師のお姉さん方にベタ褒めされながら針を抜いてもらう私。知らない間に涙が出ていたらしく、目の大きな可愛い看護師さんが拭いてくれた。

「イチャカッタ……」

「凄いよ!よく耐えた!」

 あったかい感覚があるかもね〜とかいう話だったけれど、万歳のまま注射される痛みの方が強かった。

 

 私服に着替え、おかぴ先生の元へ向かい、再び診察。後ろにはさっきの涙を拭いてくれた看護師さんが控えている。


「普通大きくても4cmくらいなんだけど……亜里沙さんの場合8cmはあるね。良性か悪性かは、中身がどうなってるかわからないのでMRIを緊急で──」


──8cm???はあ、私のお腹の中に???

確かに白黒写真の中に、ぷっくりした何かがはっきり写ってるけど、そんなに大きいとは思いもしなかった。

そんな私をよそに、淡々と続けるおかぴ先生。


「じゃあ、MRI撮って帰りましょう。結果が分かり次第ご連絡します。」


 予約なしのMRIだったから結構待つものだと覚悟していたが、杞憂に終わり、すごく早く順番がまわってきてびっくりした。ガチャガチャブンブン音のするドーム状の筒の中に仰向けになって30分ほど入る。

「じゃあね、なんかあったらこのボタン押して教えてください。あと動いちゃうと上手く撮れないので寝ないでね」

 そう言われたけど──音がうるさいので使うヘッドフォンからクラシックが延々流れていて──すごく眠くなる!リラックスはできるんだけど、こりゃ寝落ちるぞ⁈だから、一生懸命に頭の中でポップスだのラップだのノリのいい曲を唱えて、眠気と格闘している30分だった。


「ありがとうございました〜」


 なんとか寝ずにMRIを終え、待合室にいた母と合流!

 朝から行ったのに、帰る頃にはもう午後3時をすぎていた。早く結果が出るといいね、なんて話しながら家に帰る。


──その翌朝、病院から一本の電話があった。

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