息ができないってこういうことね?
採血の後に泌尿器科に戻ると、案の定混んでいた。前に来た時よりもすごい人数だったけど、今日はそれ以上だ。
待合室はもちろん満席。看護師さんが間に合わせで出してくれるパイプ椅子も埋まっていて、立つしかなかった。
しかも、そういう時に限ってなかなか呼ばれない。人間観察をするが、時間がなかなか過ぎない。番号が呼ばれても別の患者さんのものだ。
「ちょっとお手洗い行ってくるね」
母が席を外したついでにスマホを見ると、すでに予約時間は過ぎている。まだかな。暫くして母が戻ってくる頃には、廊下まで立っている人でいっぱいになってきた。
と、ここで異変が起きる。
──息が、できない。いつも自然に入ってくる酸素が、取り込めない。
「お母さん……やばいかも……???」
とりあえず母に助けを求める。足が震えて立っていられず、その場に座り込む。
視界はシャットアウトしていてほぼ真っ暗。周りの声だけがやけにクリアだ。頭も手も足も妙に冷たい。
──なんだこれ???
とにかく動けないし息が吸えない。空気を吸いたいのに吸えない、耳鳴りもする、真っ暗で見えない。
──これ、やばいのでは?このまま息吸えなかったら私、あの世直行???
とまで思ってしまったその時。
「大丈夫ですか〜!!!」
母が看護師さんを連れて来てくれた!看護師さんが救世主に見える。
──大丈夫じゃないでえええええす!!!!!
心の中で思い切り叫び返す。実際はたぶん、『ヴ……』というバケモノみたいな声しか出てない。
車椅子で処置室まで移動した。車椅子に乗るのは思えば小学生の頃のバリアフリー体験以来。でも車椅子に乗って脳を揺さぶられる感覚があるのは初めてだ。立ち上がる時も支えてもらいながらじゃないと無理だった。
ベッドに寝かせてもらい、血圧を測る。
「血圧低くなっちゃってるね。もしかして次の造影剤緊張してる?後は採血後だからその影響かな」
駆けつけてくれた看護師さんに言われ、診察前に少しベットで休むことになった。横になったらめまいも落ち着いてきて、呼吸も元に戻った。息が吸えなくなったのは初めてだったから戸惑ったけど、まあいい経験になった。
それにしても高校生にもなって緊張して低血圧ってなんなんだ?私のメンタル豆腐か?
しばらくすると、また看護師さんが血圧を測りに来てくれた。
「まだ血圧低いね〜。ちょっと血を作るために点滴しよっか」
体感的には元気だったが、数値はイマイチらしい。大人しく針を留置してもらって、1時間ほど点滴タイム。ここの看護師さんも針を刺すのが上手く、一発成功。
「暇だ……」
暇だ。スマホや単語帳は見れないし、カーテンで締め切られた中にいるので人間観察もできない。処置室は静かすぎるので、母と話すのも憚られる。暇すぎて眠たくなってきて、うつらうつらしたところで、ようやく点滴が終わった。
「正常に戻ったね。じゃあ先生のところ行こうか」
看護師さんに言われ、よっしゃああああ!!と思わずガッツポーズ。点滴のおかげもあってかぴんぴんしている。こういうことを経験するとやはり元気が1番だなあ、なんて思う。
処置室からそのままおかぴ先生の診察室に行き、CTが終わったらそのまま帰って結果が出しだい電話するねという旨を伝えられる。相変わらずおかぴ先生は素足に運動靴、机にプロテイン(ヨーグルト味)がある。なるほど、これがおかぴのデフォルトなんだな?ちょっと謎の安心感があるな、おかぴ先生。
CT室で受付をして、検査着に着替える。造影剤は注射だっていうし、なんかあったかい感じ(?)するとか聞いたし、痛いかなあと少し心配になってきた。あと、純粋に寒くて鳥肌が立ってる。
「亜里沙さーん!」
──呼ばれてしまった。
母に荷物を預け、緊張しながらCT室に入った。
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