待ち時間でのリスペクト

 泌尿器科に転科することになった私。


 あっという間に予約の日は来た。

病院の少し奥の方にある、泌尿器科の受付をすませる。総合病院は入り組んでいてわかりにくい。消化器外科の先生が言っていた通り、周りはおじいちゃんが多い。プラス奥さんやその子ども──といっても40代、50代くらい──がいるが、私がこの場の平均年齢を大幅に引き下げていることに変わりはない。

結構混んでいて、泌尿器科も隣の形成外科も椅子は埋まっている。私と母は壁に沿って立って待つ。でも、他の患者さんたちが車椅子だの松葉杖だのを使いながら通るので邪魔になってないか気が気でなかった。



大抵どこの病院も同じだと思うが、自分の番になると待合室にアナウンスが入る。

──♫ぴろりろりん♫481番の方、診察室8へお入りください。

という具合だ。機会音声でのアナウンスだが、気づかないひとも稀にいるためか、診察室にいる医師からもアナウンスができるようになっている。

この日も、私の前の患者さんがそうだった。

「〇〇さんお入りください」

「診察室8です」

何回呼んでもこない。次第に先生の声が渋くなってくる。

「〇〇さん診察室8にお入りください!!」

「診察室8、右のドアです」

「481番の方〜」

看護師さんたちがバタバタと動き、患者さんを探し始める。

5分はたっただろうか、というところでおじさんがひょっこり待合室に顔を出して、何もなかったかのようにソファーに腰掛けた。

しばらくして、受付にいた看護師さんに発見され、無事診察室へと案内された。どうやら採血に行ったあと迷ってしまい、ようやくたどり着いたらしい。

広いし入り組んでるよね、この病院!!と、思わず心の中で同情してしまう。



それにしても、病院のスタッフさんって大変だ。

病院の待ち時間は長い。

診察にドキドキしているからか、待合室ではどうしてもスマホや本を見る気にはなれない。だから仕方なしに人間ウォッチングをしていることが多いのだけれどと、これが面白い。


迷子になってしまった子ども。時間がわからなくなってしまったおばあちゃん。面会室に行きたい若者。それぞれのひとに合わせて適切に応対をしていくスタッフさんたちは本当にすごい。

何回同じことを聞かれたって、笑顔で答えている。患者さんが何も言わなくても、「どうされましたか?」と声をかけている。

私もこんな素晴らしい大人になれる日が来るのか。


プロフェッショナルとはこういうことだなあとしみじみしていると、番号が呼ばれた。




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