不安とモヤモヤ、そして転科
11月。
修学旅行も全国大会も無事に終え、定期演奏会まで束の間の休息期間。部活はあれど大会のような厳しさはなく、比較的穏やかな練習。
部活がない日を狙って、私は母と朝から大学病院に向かうことになった。紹介してもらった先は消化器外科。担当医は優しそうな30代くらいのお兄さん先生。
「とりあえず触った感じ便秘かなぁ。レントゲンとってみる?」
でも、撮ってもらったレントゲンでは、何も異常は見られなかった。
やっぱりストレスなんだろうか。ストレスで胃が飛び出てるだけなのか?そんなことあるのかは知らないけど。
「でもせっかくここまできたからCT撮っていきましょうか?」
早く帰って学校に行きたい私は渋った。別にストレスからくる便秘でしょ、もういいよ、と。
今思えばこの時CTを受けていなかったら体調不良の全ての原因も分からず、私の腎臓も爆発していただろう。
でも、母の一言で考えが変わった。
「一応受けてみたら?他に手掛かりがみつかるかもよ。」
そこまでお母さんが言うなら……と私は大人しく検査着を着てCTを撮ってもらうことに。
すぐ結果を出してくれると言うので、待合室にいると、すぐに呼ばれた。
診察室に入ると、先生が何やら慌てた様子で電話をしている。病院内で使える無線みたいな機械で、真剣に何やら話をしている。なんだろう。
「すみません、もう少し待合室でお待ちください」
こちらに気づいた先生が、電話からちょっと顔を上げた。
待合室に戻り、また座る。間違えて呼んじゃったのかな、なんて母と話していると、5分もしないうちにまた呼ばれた。
「ええと……左の腎臓に腫瘍があります」
神妙な面持ちで、見えますか、と検査画像を見せてくれる先生。左の腎臓が右よりもぷくりと膨らんで、2,3まわり大きくなっている。初めて見る自分の身体の中は、不思議な感じだった。
「これは消化器外科の範疇じゃないんですよ。泌尿器科に今連絡を入れたんで、早いうちに予約を取ってもらいます」
「泌尿器科……?」
さっきの電話はもしかしてその連絡をしていたのだろうか。それにしてもなんか話が壮大になってきたぞ。
「えっと……部活があるので……」
とりあえず部活のない日を選び、予約を取る。次の来院の時はそのまま泌尿器科に行ってくださいとのことだった。消化器外科での診察はこれで終わりらしい。先生に丁重にお礼を言って、併設されたファミリーマートに寄る。
これから学校に行かなきゃいけない。昼ごはんを買って車内で食べ、その足で学校に向かう……予定だったが、急遽変更。
なんだか不穏な予感しかしなくて落ち着かない。一旦家に帰ってから、5限に間に合うように行くことにした。
とりあえず手軽に食べられそうなパンを購入する。私が選んだのは、こんがりとしたチーズパンに甘いチュロッキー。これくらいガツンとしたものじゃないと精神が持たない気がした。
母がアップルパイを選んでいたので、珍しく思っていると、
「なんか今日はこってりしたものが食べたい!疲れた時は甘いもの!」
と、私が思っていることと全く同じことを言っていて、少し笑顔になれた。
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