母ちゃんのカレーライス


いや、正確に言うと、生きて帰って来なかつた。


母ちゃんは、肺炎なんかじゃなくて、癌だったのだ。


病院へ行った時には、もう、すでに遅く、かなり進行していたようだ。




冷たくなって、布団に横たわる母ちゃんを見ても、不思議と涙は出て来なかった。


通夜も、葬式も。





母ちゃんを見送り、一段落ついた頃。


母ちゃんのいない家。


こんなに静かだったっけ?


母ちゃんが入院してから、キッチンは使われなくなり、まるで新品のようにピカピカで。


毎日、食べてるコンビニの弁当は、とても不味くて。


学校から帰って来ても、「おかえり〜。」の声が聞こえない。


それが、こんなに寂しいなんて。


父ちゃんも俺も、あれから笑わなくなって。


母ちゃんが居ないだけで、こんなに寂しいなんて……。




「母ちゃん……。毎日、カレーでいいから、帰ってきてくれよ……。」




俺は、初めて大泣きした。


幼い子供が泣くように、声を上げ泣いた。






ー母ちゃんのカレーライス【完】ー

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母ちゃんのカレーライス こた神さま @kotakami

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