第223話
①ぽっちゃり男子チーム(黒・緑)
ゴサル丸 サイコロS・コロ丸
デス蔵 サイコロS・コロ蔵
ンゴ郎 サイコロS・コロ郎
だが氏 サイコロS・コロガ氏
VS
⑥テレビ女性アナウンサーチーム
オトカ 量産型サイコロS・ps 01
リンコ 量産型サイコロT・df
ランコ 量産型サイコロn・00
スズコ 量産型サイコロh・00
『ふん。負ける気がしないんだが』
『あはは、だが氏さん、お手柔らかにお願いしますね』
両者の先鋒はだが氏くんとスズコさん。腕を組むだが氏くんに、小さく手を振るスズコさんがモニターに映ると会場からは割れんばかりの歓声が上がった。
もちろん、大型のモニターにはだが氏くんとスズコさんだけじゃなく、2人が扱うサイコロも映し出されている。
両者のサイコロには大会用の細いランドセルの様なエネルギーパックが取り付けられており、両手には大会仕様の(念力)エネルギーライフルとエネルギーソードが握られていた。
今大会においては1度試合が始まると途中で装備の変更はできないと知らされているから、2人は慎重に扱う武器を選んでいるようだったけど、どうやら被ってしまったようだね。
ちなみに、大会運営が準備していた装備品は、念力エネルギー消費するがその分火力(与えるダメージ力)の高いエネルギーアクスやエネルギーランス、エネルギーランチャー、エネルギーシールドなどから、火力(与えるダメージ力)はエネルギー系よりもかなり落ちるがエネルギーを消費せずに弾丸を飛ばしてダメージを与えるマシンガンや、弾数は少ないが火力がエネルギー系並にあるバズーカ砲など準備されていたようだ。
念動の使用が許可されて無線式のオールレンジ攻撃用兵器(ビッ◯やファ◯ネル)のようなモノが使えたら楽しいのにと思ったりもしたけど、それだと男性選手(ほとんどの男性は念動レベルが低い)が不利になるから無理な話だったとすぐに首を振る。
そんな両者のサイコロが、運営スタッフの手によって両者の陣地からステージに向かって伸びている射出機にセットされた。
『両者、準備の方が整ったもようですね』
司会者席に移動したウタコさんとシャイニングボーイズのみんなが大型モニターの中央に映り、今まで画面いっぱいに映っていただが氏くんとスズコさん、あとサイコロの映像がモニターの両端に移動する。
『はい。そのようですね』
『両者同じ装備を選んだか』
『これはプレイヤースキルが物を言う試合になりそうだと思ったけど、サイコロの性能に違いがあるからね』
『そうだね。だが氏選手のSタイプよりもスズコ選手のhタイプは耐久面に不安はあるものの、その分速度があるようだからね。
だが氏選手はそれをどう攻略するのかな、楽しみだね』
「うむ。言いつけ通りちゃんと勉強してきたようだな」
隣の席に座ってるマリさんがモニターに映るシャイニングボーイズを見て満足そうに頷いている。
「言いつけ?」
「ああ……実はな」
なるほど。どうやらシャイニングボーイズは解説の方に回るみたい。男性選手の解説を女性であるウタコさんがするよりも、同じ男性であるシャイニングボーイズがした方が何かと都合がよく、下手にウタコさんが解説すると彼らのファンから非難の声が上がるそうだ(その逆はそうでもない)。
それだけ今大会において(バトル競技の男性の参加が初のため)、男性の扱いには慎重に慎重を重ねているのだとマリさんが説明してくれた。
マリさんは芸能事務所でも責任のある立場にいるか、色々と裏の事情も詳しいか……
「マリさん勉強になりました。ありがとうございます」
「ふ、ふむ。遠慮せず何でも聞いてくれ。私の話せる範囲なら何でも答えてやるぞ。たとえばそうだな、私のスリーサイズだとバストがひゃ……「ま、マリさんほら、始まりそうですよ」
「く? ああ……ふむ」
マリさんは親切に色々と教えてくれて助かるけど、たまに揶揄ってくるから困るんだよね。
——ふぅ……
しかしマリさんが変なこと言うから、どことは言わないけど、つい苦しそうに見えるボタンたちに目がいってしまったよ、気をつけよ。
「……そうだな。私もモニターを見るとしようか。ふふ」
「?」
急に話題を変えたからだろうけど、なんかマリさんに笑われてしまったな。
女性は視線に敏感。これはこの世界でも共通していた事実だが、この世界の女性がその事を多く語らないため、今までもこれからも俺が知る事はない。
『サイコロバトル第1試合、ぽっちゃり男子の先鋒はだが氏選手。対する(VS)アナウンサーチームの先鋒はスズコ選手です。
さあ、それではみなさんご一緒に! サイコロファイト! レディーゴー!』
そんなウタコさんの元気な声が場内に響く。
試合開始の合図で射出機から発射された2体のサイコロが、ステージまで伸びたレールをロボットアニメのような効果音と共に滑るように移動してステージの両端でピタリと止まり、戦闘開始となった。
——……止まるんだ。
俺はてっきり、移動時の勢いを利用してそのまま飛び上がって戦闘開始になるかと思っていたよ(俺はそうしていたから)。
『ふん。一気に行くんだが』
『あはは、私も簡単にはやられないよ』
試合は背負っている念力エネルギーパックの残量が0になった方の負けとなる。
この念力エネルギーは念力エネルギーライフルで攻撃しても減るし、相手からの攻撃を受けても減る(シールドが展開されるため)。弾丸系の武器であれば攻撃しても念力エネルギーは減らないが火力は落ちるし、弾丸の残数を気にする必要がある。
気をつけないと行けないのが、普通に動いていても念力エネルギーは減っていくので、最小限の動きで大ダメージを狙わないといけないから意外と頭をつかう。
『おーっと、早速だが氏選手がエネルギーライフルを乱射しながらスズコ選手に向かって一直線に迫っています。すごい勢いです。
対するスズコ選手はサイコロの機動力を活かしてバック。
だが氏選手から一定の距離を保ちながらエネルギーライフルをうまく避けています』
『オラオラオラ。俺のコロガ氏に負けはないんたが!』
モニター上部に2人のサイコロの念力エネルギー残量が表示されているけど、だが氏くんの念力エネルギーがガンガン減っていく。
それなのに、残念ながら、相手には1発も彼の射撃は当たっていない。
「これは……」
「ふむ」
練習では念力エネルギー量など気にせずガンガン撃ちまくっていただが氏くんの姿を思い出す。
——あれはライフルに慣れ、命中精度を上げるために撃っていたわけじゃないのか?
マリさんも何か言いたげだけど、何も言わず、首を振るだけに留めたようだ。
『あはは、きゃ、おっと、あぶなーい。だが氏くん。そろそろこっちも反撃するからね。当たったらごめんね』
『ふ、貴様の攻撃など、あたるわけ……あたる……な、く、だがしかし』
スズコさんのエネルギーライフルの射撃は、だが氏くんのサイコロにバンバン当たる。
どうやら、スズコさんはだが氏くんの避ける先を狙って射撃しているようで、だが氏くんが避ける度に被弾、避ける度に被弾、そんな事を何度か繰り返すと、だが氏くんのサイコロの念力エネルギーは残りわずか。
『お前、意外とやるんだが。いいだろう。見せてやるよ俺の最終奥義ってヤツをな。くらえ、ビームソードアタッーク! だが」
最終奥義と言いつつもヤケになったとしか思えないだが氏くんの突撃。ビームソードを振り回し、スズコさんのサイコロに向かって一直線に突き進む。
「いや、無理でしょう」
「うむ。あれでは狙ってくれって言っているようなものだな」
案の定、スズコさんは立ち止まり狙いを定めるようにエネルギーライフルをゆっくりと構えてから射撃した。
もちろんそれはだが氏くんサイコロに命中し、だが氏くんのサイコロの動きが止まった。
つまり、だが氏くんが操作するサイコロの念力エネルギーが0になったのだ。
『ふ、やるな。だがしかーし、次は負けんからな』
『あはは、なんかごめんね。でも楽しかったよ』
サイコロバトルはエフェクト効果で思ってた以上に迫力があって凄いと思ったけど、時間にすれば5分もかかっていなかった。
ぽっちゃり男子の先鋒、だが氏くんはあっさりと負けた。
それでも観客席からは割れんばかりの拍手が贈られていたよ。
その中には涙を流すファンらしき人の姿もあったとか……
やらかしていた男子ぼちぼち頑張る。 ぐっちょん @kouu
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