第4話 それは人間らしさ
夜中に不意に目が覚めると。私は横で眠る星野の吐息を感じていた。星野の頬に指先を持っていくと、軽く触れる。
綺麗……。
私は唇を重ねようとする。ダメだ、ここまできて勇気が尽きた。星野の唇の側から離れるとソファーから立ち上がる。ここは外に出て気分転換をしよう。私は自販機に向かい缶珈琲を一本買う。
ふ~う。
缶珈琲を飲みながら頭をポリポリとかく。冷静に考えて星野とは両想いのはずなのになぁ。女子同士の恋愛だからか極めてプラトニックである。違う、相手が星野だからだ。私は空き缶をゴミ箱に捨てると部室に戻る。すると、星野が起きていた。
「起こしてしまったか」
「寂しかったよ、独りにしないで」
「ゴメン……」
独りでいた星野は消え去りそうなほど儚く感じた。私は星野の手を取るとソファーに一緒に行く。星野の手を握り私達は再び眠りにつく。
朝、目覚めると騒ぎになっていた。星野の母親が捜索願を出していたのだ。
私達が顔を出すと。普通は叱られるかと思えばそうではない。簡単に言えば学校に泊まる事ができた結果責任が問題になっていた。学校側は平謝りで乗りきろうとしているし。警察としては子供の家出にどこまで関与するかだし。嫌な社会になったものだ。それから、私達はヴァイオリンの演奏の日時を確認して、今日の所はそれぞれの自宅に帰ることになった。
そして……。
数日後の美術部の部室である。ヴァイオリンのケースを持ち、表情は固まった星野であり緊張した様子である。
「緊張しているのか?」
「はい、大丈夫です」
ヴァイオリンを弾く機械などと言うが、それは人間らしさであった。星野は構えるとヴァイオリンを弾き始める。
♪―♪―
確かにこれならコンテストに出るだけの事はある。しかし、一瞬のミスにその後の演奏は乱れきった。
♪―
演奏が終わると星野は真っ青な表情であった。
「これで辞める?極めたかの様なことを言っていたのに……」
「違うのです、何時もは機械の様に弾けるのです」
私がジト目で見ていると。星野は泣き始めてしまった。私は星野に近づき抱きしめる。
「……こんな私でいいの?」
「あぁ、ヴァイオリンの演奏で私の前では緊張してくれた。星野はかけがえのない存在だ」
抱き合った私達は唇が重なる。ドキドキ!!!あああ、星野が欲しい。理性を最大限に働かして星野から離れる。
「私、ヴァイオリンも絵のモデルも本気でやる」
星野から迷いが消えて笑顔が戻る。その後の星野はコンテストに入賞してヴァイオリンの道を歩き始めた。それに比べて私の絵は美術部員の描いた絵でしかなかった。芸術って難しいなと思いながら、今日も星野をモデルにして描くのであった。
私の心は白で表す事ができる。 霜花 桔梗 @myosotis2
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