その⑩

そうこうしている内に

放課後になってしまった。


放課後、花壇の傍のベンチで待っています。


この手紙も、あの手紙と同じ筆跡、

同じシーリングスタンプの形。


花壇の傍のベンチといえば、

中庭か、もしくは校舎から少し

離れた藤棚の下にあるベンチか。


中庭の方が近いので、

そちらから行ってみる。


案の定、居ない。


まぁ、告白なんて大それた事を

こんなに人目の着くような、

そして声が校舎に響いて

伝わるような場所で

する人の方が少ないだろう。


さて、藤棚に向かおうか。

変に緊張してきた。

どんな人がそこに、

私を待っているんだろう。


いったい、どうなるのかな…。


藤棚に着いた彼女。

辺りを見回すが、気配が無い。

この目に写る人の影も、無い。


ただ目に写るのは

花壇に咲く背の高い青い花。


そして花壇の前のベンチ。


ベンチに近寄り、座る。


座った時に触れた、上質な紙の感触。


同じシーリングスタンプの形。

同じ封筒。


同じ筆跡。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アガパンサス ぬこみや @nukomiya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ