その⑨

朝のホームルーム。


眠気の立ち込める教室で

全く眠気を持たない彼女。


周りの怠そうな空気に侵される事無く

姿勢を崩さない彼女。


傍から見れば高嶺の花そのものである。

牡丹のような座り姿。


彼女が何を考えているのかなど

誰にも分かるはずもなかった。


その時、彼女が何を考えていたのか。


何も考えていなかった。


頭の中に回る手紙の筆跡。

滑らかな線。可愛らしい丸文字。


何を考えることも無かった。

いや、考えるまでも無かった。



放課後、花壇の傍のベンチで待っています。



行くに決まっている。

手紙の相手の正体を

知ることだけを優先した。


考えるまでも無かった、

と言ったものの、それもまた違う。


考えることが出来なかった、

と言うのが正解だろう。


ホームルームが終わり、

授業が始まった。


一限 日本史

二限 英語表現

三限 体育

四限 現代文

五限 英語会話

六限 世界史

七限 古典


眠気に支配された学生達も

寝ながらにして悲鳴をあげそうな

時間割でも、何をするもなく

黒板に書かれた内容を

ノートに写し、

先生の言うことも、ノートに書く。


ただ、いつものように集中が

出来なかった。


放課後に近づく程に

変に緊張してしまっている自分に

気づいた彼女。

気づいたはいいものの

どうすることも出来なかった。

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