第9話「最凶のツチノコ」
「人身売買をしていた青い鳥X摘発!構成員たちは瀕死の状態で発見され、みんな口を揃えてツチノコと繰り返す...ってことがあったんだって!」
夜二十二時のこと、ベッドのうえ、緋美華が隣でこちらを向いて寝転がっている水無に昼間、石堀 羽砂美とかいう悪友から聞いた情報を教えてやっていた。
「前に貴女とその幼馴染を巻き込んだ奴ら...天罰だね」
「うん、捕まってよかったけどツチノコって本当にいるのかな?」
「...アオジタトカゲだと思う」
「そんなのいるの?」
アオジタトカゲってなんだろうと思い、緋美華がスマホで画像検索してみたところ、なるほど確かにツチノコに似た生き物が出てきた。
「確かに似てるね、そもそもこの子がツチノコの正体説があるんだ」
「うん。有力だよ、それより」
「わっ」
水無はもっと緋美華に体を密着させ、自分の顔を彼女の耳に近づける。
「いるかいないか分からない生き物より、確かに存在する私を見てほしい」
健気な言葉を水無に耳元で囁かれた緋美華は、顔を赤くする、部屋が暗いので気づかれなかったのが幸いか。
「わ、わかった、見るよ、見ながら寝る」
「うん...ありがとう」
自分の顔が真っ赤なのがバレても仕方ないと諦めて、水無を見ると、なんと彼女も平然としたいつもの眠たげな表情ながら顔を赤らめてるのがわかった。
(水無ちゃんなりに勇気を出したんだ...愛おしくなってきちゃうな)
今日は凄く良い夢が見られそうだとウキウキ気分で眠りに就く、緋美華であった。
「あれ...なんかベトベトするような」
朝起きた緋美華は顔に違和感を覚える、なんだか顔が冷たいしベタベタしている感じがある。
ちょっと手で顔を拭ってみると、それはどうやら唾液のようだった。
「...あんたら...」
「あ」
緋美華を起こしに来た風見 ひよりが、凄まじい鬼の形相で立っていた、どう考えても誤解している。
「やったのね!ひみか!!」
「やられたんだけど!?」
「うん、私がやった!」
ドヤ顔でサムズアップ、水無はやりきった感を出して犯行を自白した。
「そんな堂々と!!」
「このクソガキ!」
ボコッ!!!ひよりの軽いゲンコツが、水無の頭頂部に振り下ろされた。
「嬉しいなあ、ふたりとピクニックに行けるなんて!」
いつものラフな衣装と違って、スカートじゃなくて長ズボンだったり、ちょっと厚着な緋美華は、同じくいつもより露出が少ない服装の、ひよりと水無を後ろに率いて近所にある山の獣道を登っていた。
「はあ、はあ、疲れたわ...」
「眠い...あつい、しぬ」
山登りを始めて僅か十分で既に、インドア派のふたりは、激しく息を切らしていた。
「えーっ!しょうがないなあ、もうちょい登れば丘があるから、そこで休憩しよう!」
緋美華の休憩提案に、ほっと胸を撫で下ろす貧弱者どもであった。
「おいしい!やっぱひよりは良いお嫁さんになるよ~!!」
丘のうえに敷いたブルーシートに座り、幼馴染が作ってくれたサンドイッチをバクバクバクバクバクバク、勢いよく緋美華はたくさん食べていく。
「...予想通りの食べっぷり、二百個作っといてよかったわ」
「それが入ったバックを背負ってた緋美華も、朝のうちに作ったあなたも凄いね」
「慣れっこよ、料理の腕前には珍しく自信あるんだから」
「うん。プロになってフランスへ修行いくのも、ありだと思うよ」
確かに水無も、無表情気味にみえるが美味しいと思い、ひより作のツナマヨサンドイッチをべた褒めする。
「褒めながらも遠回しに緋美華と私を遠ざけようとすんじゃないわよ、油断も隙もない」
「あはは、仲良くね〜...あっ、あれ!?」
緋美華が自分の手を見てみると、ついさっきまで持っていた筈のたまごハムサンドが無くなっていた。
「なんか私のサンドイッチが...」
「鳶に油揚げならぬサンドイッチ攫われたのかしら」
「違う。あれ」
水無が指差す先をみるとそこには、手足がないので確かに蛇だが、それにしては異様に太い生き物がサンドイッチを貪り食っていた。
「ツナマヨだわ!実在していたなんて!!」
「ひよりー動揺してUMA級に珍しい間違え方してるよー」
逆に寧ろ冷静なジト目緋美華は、珍しくひよりに対してツッコミを入れる側になった。
「捕まえよう、高値で売れる」
「危ないから駄目だよっ」
「グエッ」
水無がゆっくりとツチノコに近づこうとするのを、緋美華が襟を引っ張って止める。
「そうよ、ニュース見るに反社すら壊滅させたツチノコが存在して、もしそれがこいつなら!!」
「うん、逃げるが勝ち!UMAに幽霊にされるなんてオカルトの連鎖は勘弁だからね!!」
「むぅ...」
ツチノコがサンドイッチの入った弁当箱を貪り食っているうちに、緋美華は不服そうな水無とかなりビビっている幼馴染を両脇に抱えて、猛ダッシュで山を降りるのだった。
「ねえ、緋美華ちゃん聞いた?山でツチノコ発見の通報受けて出動した特殊部隊が壊滅したんだって!」
数日後、登校するなり近寄ってきた羽砂美が、そんなニュースを教えてくれた。
「へえー...そ、そうなんだ... ... ...」
緋美華とその背後で本を読みながら話を聞いていた、ひよりは冷や汗タラタラ。
内心あのとき逃げたのは正解だったと思いつつ、特殊部隊の人たちに黙祷...みんな気絶させられただけで、誰一人死んでないけど!
ツンデレ幼馴染とクーデレ子猫、二大ヒロイン女子高生に迫る! キマシラス @a19542004g
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